研究課題/領域番号 |
26670441
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
水野 哲也 名古屋大学, 環境医学研究所, 准教授 (70335008)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | ミクログリア / 機能性ペプチド核酸 / 脳移行性ペプチド / CpG / アルツハイマー病 |
研究実績の概要 |
本研究は、アルツハイマー病神経変性の一因として考えられているミクログリアによる慢性神経炎症に対し、ミクログリアの神経障害作用を抑制する核酸CpGに脳移行性を有するペプチドを付与した機能性ペプチド核酸を開発することによって病態改善の有用性を検討するものである。 CpGは、マウスTLR9に反応するgacgtt配列を有するもの、ヒトTLR9に反応するgtcgtt配列を有するものに、核酸分解酵素による分解を受けない修飾 (ホスホロチオエート修飾)を施し、培養神経細胞・ミクログリアを用いて、オリゴマーアミロイドベータ蛋白神経毒性に対し、抑制作用を持つものを検索した。その結果、アミロイドベータ蛋白を処理し、抗酸化酵素の作用を高めることにより神経保護作用を有するものが5種類得られた。さらにこれらの候補分子に対して脳移行性ペプチドであるRVGを付与した。CpGは、RVGに結合する部位が2か所あり、合成効率が低いため、結合部位が1か所であるRVGを用いることで、効率的に脳移行性機能性核酸ペプチドRVG-CpGを合成することができた。RVG-CpGは、培養細胞において神経細胞よりミクログリアに結合しやすいことが明らかとなった。 このRVG-CpGの脳内移行性を確かめるために、FITCによる蛍光標識を行い、正常マウスの尾静脈より投与した。投与6時間後の病理組織学的検討において、海馬への集積が認められた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究は、ミクログリアを神経保護的に制御する脳移行性機能性ペプチド核酸を開発し、末梢投与によるアルツハイマー病への有用性を検討することを目的としている。 現在までに、開発した機能性ペプチド核酸の脳移行性を確認することが出来た。機能性核酸CpGと脳移行性ペプチドRVGとの合成効率の低さが問題となったが、RVGの変異体を用いることにより合成効率が向上したことも有用な成果である。
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今後の研究の推進方策 |
今回得られた脳移行性機能性ペプチド核酸を、アルツハイマー病モデルマウスに経静脈投与し、免疫染色により、継時的に、脳移行性を検討する。また、機能性ペプチド核酸による病態改善効果について、行動実験(新奇物質探索試験、恐怖条件づけ学習試験、モーリス水迷路試験)、および病理学的解析により検討する。投与の時期、期間については、発症前、発症後および短期投与、長期投与等を検討する。病理学的には、脳内におけるミクログリアのアミロイドベータ蛋白処理、老人斑減少を確認する。さらに、投与前後のミクログリアのサイトカイン、ケモカイン、神経栄養因子産生プロファイルを検討することにより、機能性ペプチド核酸の作用機序を明らかにする。
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次年度使用額が生じた理由 |
合成依頼したRVG-CpGの効果が良好なため、追加合成の必要がなくなった。
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次年度使用額の使用計画 |
現在使用中のRVG-CpGのさらなる合成にあてる。
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