研究課題
平成26年度は、まずは既に作製していたGBA欠損メダカの表現型解析を行った。GBA欠損マウスは出生間もなく致死的となり解析が困難であるのに対し、GBA欠損メダカは月単位で生存し、病態の観察が可能であった。GBA欠損メダカは2ヶ月齢で行動異常を示し、5ヶ月齢までに死亡した。3ヶ月齢での病理学的解析では、神経炎症を伴った非特異的な神経細胞死、オートファゴソームの蓄積を伴った軸索の腫脹、同部位へのα-syn蓄積とリソソームの異常を認めた。パーキンソン病との関連においては、オートファジー・ライソソーム系の異常が原因でα-synの蓄積を起こすと考えた。次に、α-syn欠損メダカを作製した。当初はTILLING法にて作製することを予定していたが、TALENsによる作製に成功し、この成果は論文として発表した(Ansai S, et al. Dev Growth Differ 2014)。そして、GBA/α-syn二重欠損メダカを作製・解析したが、結果としてGBA欠損メダカの表現型は変化せず、本モデルにおけるα-synの病態への関与は確認できなかった。一因として、本モデルはゴーシェ病としての表現型が強く、α-syn蓄積による毒性を観察することが困難であった可能性を考えた。GBA欠損メダカとGBA/α-syn二重欠損メダカを解析した成果は論文として発表した(Uemura N, et al. PLoS Genetics 2015)。さらに、神経細胞特異的なメダカGAP43プロモーター下にヒトα-synを発現するコンストラクトを作製した。このコンストラクト中のα-synは野生型のみならず、遺伝性パーキンソン病の原因と報告されているA53T、A30Pそれぞれのミスセンス変異を持ったものも同時に作製した。それぞれのコンストラクトについて数ラインずつのα-syn Tgメダカを作製した。いずれのラインにおいても脳におけるヒトα-synの発現は確認できた。現在、これらα-syn Tgメダカの表現型解析を行っており、また同時にGBA欠損メダカとの交配を進めている。
2: おおむね順調に進展している
本研究の目的は、パーキンソン病の研究に有用と考えられるGBA欠損メダカの研究を発展させることである。平成26年度において、まずは本研究の基礎的なデータとなるGBA変異メダカそのものの解析を終了させることができた。GBA/α-syn二重欠損メダカの解析から、α-synの病態への関与を調べることを試みたが、この解析は完了したものの、研究をさらに発展させられる結果は得られなかった。平成26年度にα-syn Tgメダカの作製は完了することができ、平成27年度はα-syn Tgメダカの解析のみならず、GBA欠損/α-syn Tgメダカの解析を進めることが可能と思われる。
マウスやゼブラフィッシュと比較するとメダカの研究者は少なく、研究を進める上では特に使用可能な抗体が少ないことが障害となる。これまでメダカにおいては、オートファゴソームやライソソームを可視化するための抗体は報告されておらず、これらを観察するためにLC3B-GFPやLamp1-mCherryを発現するTgメダカを作製することを予定していた。しかし、GBA欠損メダカの解析の過程で、多数の市販抗体を試したところ、メダカLC3BとCathepsin Dを免疫組織染色できる抗体を発見した。今後、オートファゴソームとライソソームを観察するために、Tgメダカは作製せずこれら抗体を用いることとした。最近、GBA欠損マウス(造血系・間葉系細胞のみのコンディショナルノックアウト)にGBA2を欠損させると、骨病変、肝脾腫、血球減少などの表現型が改善することが報告された(Mistry PK, et al. PNAS 2014)。なお、このマウスモデルは神経系に表現型を来さない。我々は、GBA欠損メダカが神経症状を来たすものの生存可能な点を利用し、GBA2欠損メダカの作製とGBA/GBA2二重欠損メダカの作製を行うことにより、神経系におけるGBAとGBA2の相互作用を解析することを想起した。具体的には、GBA/GBA2二重欠損により、α-syn蓄積を含めた表現型の変化を観察するが、GBA2はERに存在するglucocerebrosidaseであり、病態にERストレスが関与する可能性がある。平成27年度は解析対象として、α-syn TgメダカとGBA欠損/α-syn Tgメダカに加え、さらにGBA/GBA2二重欠失メダカをBip-EGFP Tgメダカを利用してin vivoで解析する予定とする。
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すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (4件) 備考 (1件)
PLoS Genetics
巻: 11 ページ: e1005065
10.1371/journal.pgen.1005065.
Dev. Growth Differ
巻: 56 ページ: 98-107
10.1111/dgd.12104.
http://www.kuhp.kyoto-u.ac.jp/%7Eneurology/index.html