研究課題
ヒトBNB構成内皮細胞に発現するinflux transporterの網羅的解析に着手した。研究代表者の教室で樹立したヒトBNB由来内皮細胞株(FH-BNB)を継代培養し、十分量の細胞膜成分、細胞内可溶性成分を得るべく60mm dishにconfluentとなる細胞培養を反復した。FH-BNB株は継代に時間を要し、また、以前に着手したBBB由来内皮細胞での解析の経験から、LC/MS/MS高感度質量分析装置を用いた定量・定性的蛋白分析には100mm dishで30-50枚分のconfluent cellが必要と予想されるため、いまだ十分量の細胞の蓄積に至っていないが、平成27年度内に同作業が完了する目途がついた。
3: やや遅れている
本研究の最終ゴールは、ヒトBNBバリアー機能の間接的操作によって、各種難治性ニューロパチーのより生理的かつ副作用の少ない治療法開発に道をつけようというものである。ヒトBNBバリアー由来不死化細胞株は研究代表者の教室で世界に先駆けて開発したものであり、未だ世界中で同細胞の開発に成功したという報告はないが、細胞の操作は血液脳関門BBB由来のものと比べ若干の困難を伴い、とくに大量培養が要求される本実験計画のスタートにあたって、doubling timeの長さが当初の計画を遅らせている最大の要因となっている。上述のように代替細胞は存在しないため我々の細胞で研究計画を継続する以外の選択はないが、平成27年度中に量的な問題はほぼ解決する見込みである。
実験1:ヒトBNB構成内皮細胞に発現するinflux transporterの網羅的解析を継続して行う。研究代表者の教室で樹立したヒトBNB由来内皮細胞株(FH-BNB)を継代培養し、十分量の細胞膜成分、細胞内可溶性成分を得るべく60mm dishにconfluentとなる細胞培養を反復する。LC/MS/MS高感度質量分析装置を用いた定量・定性的蛋白分析を施行し、サブトラクション解析ソフトを用いて、各処理で誘導された蛋白を定量的に比較解析する。細胞膜蛋白は疎水性であるので、膜を可溶化した後、蛋白分解酵素で処理し、レクチンカラムを用いて糖鎖結合ペプチド鎖を回収し、ショットガン質量分析法で網羅的に分析する。実験2:平成27年度には、BNB構成内皮細胞を通過してペリサイトに作用し、ペリサイトを活性化する物質の同定にあわせて着手する。将来の医薬品としての発展の可能性を考慮して、目的とする物質は血中投与によって活性をもつことを前提とする。したがって、本研究で扱うペリサイトを活性化する物質は、BNBを構成する内皮細胞を通過し得ることが必須となる。BNB通過の条件としては(1)低分子量であること、(2)hydrophobicであること、(3)特異的influx transporterを持っていること、などの条件のうちいくつかを満たしていることが要求されるが、条件(3)についてはヒトBNB由来内皮細胞に発現するinflux transporterの網羅的解析(実験1)が前提となるため、まず(1)(2)の条件を持つものから解析を開始する。
すべて 2014
すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (2件) (うち招待講演 2件)
PLoS One
巻: 9 ページ: e104205
10.1371/journal.pone.0104205
J Neurol Sci
巻: 346 ページ: 75-79
10.1016/j.jns.2014.07.059.
Peripheral Nerve
巻: 25 ページ: 201-206