我々は著明な高HDL 血症を示し、頸動脈エコーで内膜中膜複合体肥厚やプラークを認め、内皮リパーゼ(EL) の活性・蛋白量が極端に低値を示す症例を見出した。また、HPLCによる解析でHDL粒子径の増大とHDL粒子がTG richであることも見出し、本症例の高HDL血症がCETP欠損症とは明らかに異なり、EL活性の低下に起因することが確認できた。しかしながら、本症例の全ゲノム遺伝子解析を行ったところ、EL遺伝子のエクソン及びエクソン・イントロン境界領域に有意な変異を見出すには至っていない。そこで、以前は別の研究機関で測定したEL massを本院で再度測定したところ、EL massはほぼ正常範囲内にあり、その原因は不明であるものの、EL活性についても再検を行った。EL活性は血清とEDTA血漿、採血後の保存条件によるポリマー化の可能性など、様々な因子により影響されることが明らかとなり、本症例ではEL活性値は低い傾向を示すものの、活性が安定せず、現在はEL遺伝子の上流の遺伝子変異ないし、EL活性に影響する蛋白の異常による高HDL血症と考えている。
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