研究課題/領域番号 |
26670453
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研究機関 | 自治医科大学 |
研究代表者 |
矢田 俊彦 自治医科大学, 医学部, 教授 (60166527)
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研究分担者 |
岩崎 有作 自治医科大学, 医学部, 講師 (60528420)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | インスリン / GLP-1 / 求心性迷走神経 / 糖代謝 / 摂食 |
研究実績の概要 |
GLP-1 とインスリンの求心性迷走神経への直接作用を、第一に、マウスの求心性迷走神経節から単離したニューロンを用いてin vitro実験で解析した。GLP-1 は濃度依存性に単離ニューロン細胞内カルシウム濃度([Ca2+]i)を増加させた。インスリンも濃度依存性に[Ca2+]iを増加させた。GLP-1応答細胞とインスリン応答細胞は一部重複した。単独では効果のない低濃度のGLP-1とインスリンの共投与により、[Ca2+]i増加が誘導される細胞が観察された。また、低濃度のGLP-1とインスリンに小さな[Ca2+]i増加を示す細胞は全て、両者の共投与により、より大きな[Ca2+]i増加を示した。以上の結果より、GLP-1とインスリンが共働的に求心性迷走神経を活性化することがin vitro実験で明らかとなった。第二に、invivoでのGLP-1とインスリンの共働作用について、摂食抑制を検討したが、これらの末梢投与により血糖値低下が起り、それが摂食に影響することが判明した。GLP-1とインスリンの作用と、二次的な血糖値低下の影響とを区別することが難しく、この課題の検討は断念した。一方、実験中にGLP-1投与がマウスの体温を上昇させることを観察した。そのメカニズムの検討したところ、副腎髄質からアドレナリン分泌を促進すること、この作用がカプサイシン処理により消失したことから、カプサイシン感受性感覚神経/求心性迷走神経を介する可能性が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
マウスの求心性迷走神経節から単離したニューロンを用いたin vitro実験を行った。単独では効果のない低濃度のGLP-1とインスリンの共投与により[Ca2+]i増加が誘導される細胞が観察され、GLP-1とインスリンが共働的に求心性迷走神経を活性化することがin vitro実験で明らかとなった。次に、in vivoでのGLP-1とインスリンの摂食抑制作用における共働作用を検討したが、これらの末梢投与により血糖値低下が起り、それが摂食に影響することが判明した。GLP-1とインスリンの作用と、二次的な血糖値低下の影響とを区別することが難しく、この課題の検討は断念した。in vivoで他に可能な解析方法が無いか、引き続き検討する。副次的に、GLP-1投与がマウスの体温を上昇させることを観察し、そのメカニズムとして副腎髄質アドレナリン分泌を促進すること、この作用がカプサイシン処理により消失したことから、カプサイシン感受性感覚神経/求心性迷走神経を介する可能性が示唆された。
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今後の研究の推進方策 |
GLP-1とインスリンの共働作用に関して、in vitro実験に関する追加実験を行ったうえ、データをまとめて論文化を目指す。一方、in vivo実験に関しては単なる添加実験では困難であることが判明したので、他に可能な解析方法が無いか、引き続き検討する。 GLP-1による体温上昇のメカニズムに関しては、カプサイシン感受性感覚神経/求心性迷走神経および副腎髄質への遠心性神経の役割の解析を計画している。
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次年度使用額が生じた理由 |
GLP-1とインスリンの共働作用に関して、in vitro実験に関する追加実験を行い、データをまとめて論文を作成・投稿する。GLP-1による体温上昇に関して、感覚神経/求心性迷走神経および副腎髄質への遠心性神経の役割を検討する実験を行う。これらの実施のために、次年度使用額が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
実験に必要な試薬と動物購入、また、論文投稿にかかる費用に使用する予定である。
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備考 |
補助事業期間延長承認 日本学術振興会承認平成28年3月22日
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