研究課題
GLP-1およびインスリンは濃度依存的に単離した求心性迷走神経細胞内Ca2+濃度([Ca2+]i)を上昇させた。単独では効果の弱い低濃度のGLP-1とインスリンの共投与により、単独投与に対して小さな[Ca2+]i増加を示したニューロンに大きな[Ca2+]i増加を惹起し、非応答ニューロンに[Ca2+]i増加を誘導した。これらの結果より、GLP-1とインスリンの相加作用、相乗作用が明らかとなった。当初、GLP-1とインスリンの共投与のin vivo解析を予定していたが、この処理は血糖値を大きく変化させ、その影響を排除することが難しく、解析が困難であった。これに代わり、糖の一種が経口投与によりGLP-1とインスリンを同時に分泌させることを発見した。そこで、この糖の作用を用いてGLP-1とインスリンの共同作用を検討した。この糖の経口投与は摂食抑制と耐糖能向上作用を示し、連続投与により高脂肪食負荷マウスの過食・肥満・耐糖能障害を改善した。これらの作用は、GLP-1受容体欠損動物で大部分消失し、求心性迷走神経遮断により阻害された。以上の結果より、GLP-1とインスリンは共働作用により求心性迷走神経ニューロンを効率良く活性化し、これが摂食抑制と耐糖能向上さらには病態動物の抗肥満・糖尿病作用につながる可能性が示唆された。GLP-1の静脈内投与の新たな作用として、マウスの体温を上昇させることを観察し、そのメカニズムとして副腎髄質アドレナリンの分泌の促進を見出した。これらの作用は、カプサイシン処理により消失したことより、カプサイシン感受性の求心性迷走神経を介する可能性が示唆された。一連の結果より、GLP-1の摂食・糖代謝・エネルギー代謝調節を仲介する求心性迷走神経の重要な役割が明らかとなった。
すべて 2017 2016
すべて 雑誌論文 (7件) (うち査読あり 7件、 オープンアクセス 7件、 謝辞記載あり 5件) 学会発表 (15件) (うち国際学会 1件)
Diabetes
巻: 66(3) ページ: 699-709
10.2337/db16-1166.
Am J Physiol Endocrinol Metab.
巻: 印刷中 ページ: 印刷中
10.1152/ajpendo.00338.2016.
Molecular Metabolism
巻: 6(5) ページ: 428-439
10.1016/j.molmet.2017.02.003.
Scientific Reports
巻: 6 ページ: 25912
10.1038/srep25912
Surgery
巻: 159(5) ページ: 1342-1350
10.1016/j.surg.2015.12.003.
Endocrinology
巻: 157(6) ページ: 2322-2332
10.1210/en.2015-2082.
巻: 5(8) ページ: 709-715
10.1016/j.molmet.2016.06.010.