研究課題
糸球体上皮細胞特異的Cre recombinaseトランスジェニックマウスとインスリンシグナル伝達分子のfloxマウスとの交配により、糸球体上皮細胞特異的なインスリンシグナル伝達分子欠損マウス(KOマウス)、および対照としてのfloxホモマウス、Creトランスジェニックマウスを作製した。KOマウスは生後3週齢よりアルブミン尿を呈し、10週齢を迎えるまでに全例死亡した(n=75)。KOマウスの血糖値は対照マウスと同程度であったが7週齢ではBUN、Scr、K濃度が対照群に比べて有意な高値を示したことから、KOマウスの死因は末期腎不全と考えられた。KOマウスの腎組織病理学的解析では4週齢からすでに糸球体硬化病変や多数の蛋白円柱が観察され、電子顕微鏡による観察でもKOマウスにてポドサイト腫大とfoot process消失が認められた。なお、KOマウスの糸球体基底膜厚は対照群と同程度だった。KOマウスからの単離培養糸球体上皮細胞を用いてDNAマイクロアレイ解析を行った結果、発現上昇を認めた遺伝子群からglutathione-mediated detoxification、oxidative stressなどのパスウェイが抽出され、糸球体上皮細胞における酸化ストレス亢進が示唆された。また、KOマウス糸球体上皮細胞ではオートファジー誘導に関連するFIP200、Atg101遺伝子の発現低下とともにLC3-II量の低下と細胞内p62蓄積量の増加が認められ、糸球体上皮細胞におけるオートファジー障害が示唆された。本研究における検討結果より、糸球体上皮細胞におけるインスリンシグナル伝達系の障害は高度蛋白尿を引き起こし、ポドサイトの機能制御において重要な働きを担うことが示された。
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