研究課題/領域番号 |
26670460
|
研究機関 | 長崎大学 |
研究代表者 |
山下 俊一 長崎大学, 原爆後障害医療研究所, 教授 (30200679)
|
研究分担者 |
高村 昇 長崎大学, 原爆後障害医療研究所, 教授 (30295068)
光武 範吏 長崎大学, 原爆後障害医療研究所, 准教授 (50404215)
サエンコ ウラジミール 長崎大学, 原爆後障害医療研究所, 准教授 (30343346)
|
研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2016-03-31
|
キーワード | 環境 / 放射線 / 内分泌学 / 甲状腺癌 |
研究実績の概要 |
福島県では原発事後直後の放射線セシウムおよびヨウ素の包括的空間線量率から、①はま通り地域、②中通り地域、③会津地域の3つの区分に応じた、甲状腺超音波所見の異常頻度を公表している。本調査では、事故当時0~18歳の県民すべて約36万人が対象であるが、これらの甲状腺検査データ解析の進捗状況と精度管理ならびに事故当時の住所別頻度も明らかにされている。今年度は、福島県川内村の長崎大学復興支援拠点を活用した水質汚染実態調査をモデル事業として立ち上げた。すでに福島県の既報データからは、はま通り地域における地下水の硝酸性窒素及び亜硝酸性窒素の濃度が高い地下水が報告され(11~38mg/L)、その詳細を検討する為に、現在の水質汚職防止法に基づく測定機関である福島県、福島市、郡山市、いわき市と協力し、概ね10km四方メッシュに区分した県下合計113メッシュを5年周期で調査を実施している現状の結果と調整を行い、サンプリング地点や対象数を増やして行えるように実施計画した。全数調査ではなく、適切なサンプリング調査の手法を導入し、概ね100ヶ所を標的に現場を巡回しサンプルを収集の上、長崎大学へ移送し亜硝酸性窒素を中心に測定した。その結果、大半は正常範囲以内であり、特別高値を示すサンプルは無く、ベラルーシの報告とは大きく異なることが判明した。更にサンプル数を増やすだけはなく、川内村における甲状腺異常頻度との関係、さらに他の交絡因子の候補として飲料水中の発がん物質との関係を検討する予定である。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の計画通り、現地訪問による住民環境の違いによる川内村各地域地区の水道水、地下水のサンプリグを104ヶ所で行い、比色法により硝酸態窒素濃度の測定を行った。さらに長崎大学が連携協定で拠点を構築し社会人大学院生を常駐させている川内村を中心に、間取り調査、質問表収集も合わせて行ない、硫酸態濃度に関する土壌汚染地図の作成を進めている。測定結果は水道水・地下水の中間値は0.62mg/L(0.2~2.51)であり、いずれも基準値である10mg/L以下であった。一方亜硝酸窒素も0.005mg/L以下であり、基準値を下回っていた。以上の結果は、川内村における亜硝酸動態の異常が甲状腺超音波所見に直接関与している可能性は乏しく、チェルノブイリとの大きな違いがあることが判明した。
|
今後の研究の推進方策 |
平成26年度のベラルーシ及び福島県での打合せ協議、ならびに予備的測定データの解析を終了した上で、本格的なモデル地区でのサンプリング調査を開始する予定であったが、すべてが正常範囲内という結果から福島県全体における亜硝酸動態の関与は考えにくいと判断された。すでに、放射線ヨウ素内部被ばくの線量推計結果がWHO、UNSCEARその他で報告されているが、甲状腺癌を引き起こす実測値での被ばく線量は福島県下では観察されていない。福島県の状況は1~数mSv以下の甲状腺被ばく線量推計が大多数であるが、乳幼児から高校生の甲状腺超音波検査で検出される異常所見は高頻度な嚢胞と結節が診断上問題となる。がんリスクよりも高頻度で検出される小児甲状腺異常所見、すなわち結節と嚢胞の原因を生理的な変化と言えるのか、生後曝露される環境化学物資の影響なのかを他の交絡因子を考慮した上で、調査方法を再考する。 ベラルーシにおける飲料水の水質調査結果と甲状腺がんとの関係についてもデータの解析と評価を共同で推進し、チェルノブイリと日本の違いについての疫学調査研究を推進する予定である。さらに測定データを基に論文化に向けた準備を進める。
|
次年度使用額が生じた理由 |
疫学調査研究を推進し、測定データを基に論文化に向けた準備を進めるため。
|
次年度使用額の使用計画 |
福島県での調査方法については再考し、ベラルーシにおける飲料水の水質調査結果と甲状腺がんとの関係についてもデータの解析と評価を共同で推進し、チェルノブイリと日本の違いについての疫学調査研究を推進し、測定データを基に論文化に向けた準備を進める。
|