研究課題
3番染色体長腕21領域(3q21)と同じく3番染色体長腕26領域(2q26)との転座および逆位は、3q21に存在するGATA2遺伝子エンハンサーが、3q26領域に存在するEVI1遺伝子の高発現を誘導することによって、予後不良の急性骨髄性白血病を誘導する。以前に、私たちは3q21と3q26との逆位アリルを約200 kbにわたって再現する大腸菌人工染色体(BAC)トランスジェニックマウス(3q21q26マウス)を樹立した。このマウスは24週令以降に白血病を発症し、ヒト白血病のモデルとなっている。本研究では、このモデルを用いて、3番染色体転座または逆位を伴う白血病における白血病幹細胞を同定することを目的とした。27年度は、この転座アリルによって制御されるEVI1遺伝子の発現を可視化するために、転座アリルの制御下にtdTomato蛍光タンパク質を発現するトランスジェニックマウスを樹立し、その解析を行った。このマウスにおいてtdTomato蛍光の発現プロファイルを解析したところ、tdTomato蛍光は、造血幹細胞および前駆細胞を含むLin-/Sca1+/c-Kit+(LSK)細胞において最も強く観察され、分化マーカーを発現する細胞では減少する傾向があった。一方で、B細胞の分化マーカーであるB220陽性細胞では、tdTomato蛍光が維持されていた。26年度までの白血病を発症した3q21q26マウスを用いた解析からも、B220陽性細胞に白血病幹細胞が含まれることが示唆されており、今回の解析と一致していた。これらの結果から、B220陽性細胞では、転座アリルによってEVI1遺伝子の発現が高く維持されており、これらの細胞が白血病発症の母体となっていることが示唆された。
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