研究課題
がん抗体療法における治療成績向上のためには、抗体のantibody-dependent cell-mediated cytotoxicity (ADCC)効果を上げる工夫が必要である。このためにはADCC活性を有するエフェクター細胞をがん局所に集積させることが必要である。本研究ではCD16(FcγRⅢ)-CD3ζキメラレセプター遺伝子発現ベクターを作製し、抗体療法とCD16-CD3ζ遺伝子改変人工T細胞輸注との併用による新規がん免疫細胞療法を開発する目的で研究を遂行し、平成26年度に下記の結果が得られた。1.CD16-CD3ζキメラレセプター遺伝子発現レトロウイルスベクターを構築した。2.CD16-CD3ζキメラレセプター遺伝子発現レトロウイルスベクターを末梢血CD8陽性T細胞に遺伝子導入し、その機能を解析した。その結果、CD20陽性悪性リンパ腫細胞ならびにHer2/neu陽性乳がん細胞に対して、それぞれrituximab(抗CD20抗体)およびtrastuzumab(抗Her2抗体)添加時に高いADCC活性を呈することが明らかとなった。3.CD16-CD3ζキメラレセプター遺伝子発現CD8陽性T細胞の抗体添加時のin vivo抗腫瘍活性を検討した。CD20陽性B細胞性悪性リンパ腫細胞株をNOGマウスに移植し後、CD16-CD3ζキメラレセプター遺伝子導入CD8陽性T細胞および抗CD20抗体を様々な組み合わせで投与し、in vivoにおける抗腫瘍活性を検討した。その結果、CD16-CD3ζキメラレセプター遺伝子導入CD8陽性T細胞と抗CD20抗体を同時投与した際にのみ、高い抗腫瘍活性が認められた。
2: おおむね順調に進展している
当初の計画どおり、CD16-CD3ζキメラレセプター遺伝子発現レトロウイルスベクターを構築した。また、CD16-CD3ζキメラレセプター発現レトロウイルスベクター遺伝子導入T細胞の抗腫瘍活性をin vitroならびにヒト腫瘍移植ヒト化マウスモデルを用いてin vivoで証明できた。
本年度の研究によって、CD16-CD3ζキメラレセプター遺伝子発現T細胞のADCC活性機能獲得を証明できた。現在臨床の場で広く用いられている抗体療法とCD16-CD3ζキメラレセプター遺伝子発現T細胞養子免疫との併用による新たながん免疫療法のProof of conceptが達成できたと考えられる。来年度は臨床応用に向けて、さらに抗体の種類を増やし、普遍性を検証し、臨床応用に向けた前臨床試験を完遂する計画である。
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