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2014 年度 実施状況報告書

ニッチペプチドによる新規造血幹細胞制御法の開発

研究課題

研究課題/領域番号 26670468
研究機関九州大学

研究代表者

杉山 大介  九州大学, 先端医療イノベーションセンター, 特任教授 (00426652)

研究期間 (年度) 2014-04-01 – 2017-03-31
キーワードニッチペプチド / 造血幹細胞制御法
研究実績の概要

造血幹細胞は、多分化能と未分化性を維持しつつ増殖する自己複製能を持つが、その未分化性を維持するためのシステムは未解明であり、幹細胞を自在に制御する方法は確立されていない。申請者は、造血幹細胞を制御するニッチ細胞から生理活性ペプチドを同定するノウハウを有しており、これまでに胎仔肝臓造血細胞ニッチより新規生理活性ペプチドKS-13を同定し、解析を行っている。本研究においてもこの手法を利用し、造血幹細胞の未分化性を維持する低分子生理活性ペプチドの同定、作用機序の解析、及びペプチドを応用した新規造血幹細胞制御法の開発を目的としている。
平成26年度には、胎齢14.5日目のマウス胎仔肝臓より造血幹細胞ニッチであるDlk-1陽性CD45陰性Ter119陰性肝芽細胞を回収し、この細胞からペプチド試料を調整した。LC-MS/MS解析によりこのペプチド試料に含まれる5種類のペプチドが検出され、そのうち分子量2,000以下の新規低分子ペプチドが2種類得られた。さらに、これら低分子ペプチドを人工合成してマウス胎仔肝臓造血幹細胞(CD45陽性c-Kit陽性Sca-1陽性細胞)に対する添加培養を行ったところ、培養4日目にペプチド未添加群と比較して、ペプチド添加群で細胞の増殖が約20%抑制されていた。さらに、同様に培養した細胞の細胞表面マーカー解析では、ペプチド未添加群に比べてペプチド添加群で造血前駆細胞分画の割合が増加しており、これらのペプチドが造血幹細胞の分化に作用する活性を持つ可能性が示唆された。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

研究提案において、平成26年度には、胎仔肝臓における肝芽細胞(Dlk-1陽性CD45陰性Ter119陰性細胞)の回収及びペプチド試料調整、ペプチド試料からの新規低分子ペプチドの同定、人工ペプチドの合成及び造血幹細胞へのペプチド添加培養による生理活性の評価を計画した。
これに従い、胎仔肝臓肝芽細胞(Dlk-1陽性CD45陰性Ter119陰性細胞)からペプチド試料を調整し、LC-MS/MS解析を行うことによって分子量2,000以下の新規低分子ペプチドを2種類同定した。さらに、これらのペプチドを人工合成して胎仔肝臓の造血幹細胞 (CD45陽性c-Kit陽性Sca-1陽性) 分画に対する添加培養を行い、ペプチド添加群で細胞の増殖が約20%抑制されること、フローサイトメトリー解析ではペプチド添加群で造血前駆細胞分画が増加すること、が明らかになった。
したがって、上記のように平成26年度には当初の計画に沿って研究を推進し、成果を得ていることから、本研究はおおむね順調に進展している。

今後の研究の推進方策

平成26年度に2種類の新規低分子ペプチドを同定していることから、平成27年度にはこれらのペプチドのin vitro機能解析を行うと共に、ペプチドの作用機序解析、造血幹細胞制御法への応用可能性の検討を行う。
in vitro機能解析では、培養後の細胞を用いたコロニーアッセイにより造血前駆細胞数及びその分化傾向を評価し、その結果に応じて造血幹細胞の評価(in vitro長期培養、成体骨髄再構築能の検討など)を行う。ペプチドの作用機序解析においては、培養後のサンプルを用いてDNAマイクロアレイ解析、リン酸化アレイ解析を行い、標的遺伝子・シグナル伝達経路を検討する。マイクロアレイ解析において顕著な発現の変化を認めた遺伝子に関してはreal time PCRを利用して評価し、遺伝子発現の変化が確認された場合には、クロマチン免疫沈降法によりペプチドが当該遺伝子のプロモーター領域に結合するかを検討する。また、ビオチン標識した低分子ペプチドを造血幹細胞に添加培養し、抗ビオチン抗体を用いた免疫沈降物から、ペプチドと結合する標的タンパク質を同定する。また、研究の進捗状況に応じて、ヒト臍帯血CD34陽性造血幹細胞への新規低分子ペプチド添加及びin vitro長期培養を行い、ヒト造血幹細胞の未分化性が維持可能か検討する。
これらの研究を推進し、造血幹細胞に対して生理活性を有する新規ペプチド同定、その作用機序の解析、及びペプチドを応用した新規造血幹細胞制御法の開発を目指す。

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公開日: 2016-05-27  

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