研究課題/領域番号 |
26670469
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研究機関 | 慶應義塾大学 |
研究代表者 |
中島 秀明 慶應義塾大学, 医学部, 准教授 (30217723)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | O結合型β-N-アセチルグルコサミン転移酵素 / O-GlcNAc / Ogt / 胎仔肝造血 / 造血幹細胞 |
研究実績の概要 |
O結合型β-N-アセチルグルコサミン(O-GlcNAc)転移酵素(OGT)は、タンパク質のセリン・スレオニン残基にO-GlcNAc基を付加する酵素であり、ヒストンなどのエピゲノム修飾に重要である。。このようなタンパク質の糖鎖修飾は、リン酸化と並ぶタンパク質修飾として、細胞応答を制御するシグナル伝達系で極めて重要な役割を果たしている。実際セリン・スレオニン残基のO-GlcNAc化は同じ部位のリン酸化と拮抗することが知られており、タンパク質のリン酸化シグナルと密接に関連している。本研究では、1)OGTが造血幹細胞(HSC)機能制御や血球分化に果たしている生理的役割、2)OGT機能異常と腫瘍発症の関係、3)TET2の下流因子としてのOGTの役割、を明らかにするため、造血系特異的OGTノックアウトマウスを作成し、HSC機能や血球分化、腫瘍発生などを詳細に解析することを計画した。 平成26年度は、造血系特異的にOGTを欠失させるためOGT コンディショナルノックアウト (cKO)マウスをVav-Creトランスジェニックマウス(Tg)と交配し、OGT cKO x Vav-Cre Tgマウスを作成した。OGT cKO/ Vav-Cre Tgは胎生致死であり、新生仔は得られなかった。妊娠マウスの解析では、OGT cKO/ Vav-Cre Tgは少なくとも胎生14.5日(E14.5)まではメンデルの法則にしたがって存在していた。そこでOgtが胎仔造血に果たす役割を解析するため、E14.5の胎仔肝(FL)の解析を行った。OGT cKO/ Vav-Cre TgのE14.5 FLの細胞数は野生型に比べて有意に低下しており、Ogtの欠失がFL細胞の発生・増幅に重要な役割を果たしていることが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初の計画では、平成26年度はOGT cKO/ Vav-Cre Tgの血球分化、造血幹細胞機能についてフローサイトメトリー、コロニーアッセイ、競合的細胞移植などを用いた全般的な解析を施行する予定であった。しかしながらOGT cKO/ Vav-Cre Tgの交配に遅れが生じ、実験に必要な妊娠マウスが十分に得られなかった。このため解析に若干の遅れが生じている。
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今後の研究の推進方策 |
今後は計画の遅れを取り戻すべくOGT cKO/ Vav-Cre Tgの解析を引き続き進めるとともに、OGT cKOとMx-Cre Tgの交配も行い成体骨髄造血におけるOgtの役割を詳細に解析する予定である。 具体的には、フローサイトメトリーを用いたOGT cKO/ Vav-Cre Tg E14.5 FLのHSC/造血前駆細胞分画の解析、細胞移植実験によるOGT cKO/ Vav-Cre Tg E14.5 FL-HSCの長期骨髄再建能・自己複製能の解析を施行する。また、OGT cKO/ Mx-Cre TgにpI-pC投与を行って誘導的にOgtを欠失させた骨髄細胞を用いて同様の実験を行い、Ogtの成体骨髄造血における役割を詳細に解析する。 続いてまた、Ogt欠失FLないしは骨髄における造血異常の原因を探るため、網羅的遺伝子発現解析やゲノムワイドなDNAメチル化解析などを施行し、Ogtの下流因子やTET2との関わりを詳細に解析する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初の計画では、平成26年度はOGT cKO/ Vav-Cre Tgの血球分化、造血幹細胞機能についてフローサイトメトリー、コロニーアッセイ、競合的細胞移植などを用いた全般的な解析を施行する予定であった。しかしながらOGT cKO/ Vav-Cre Tgの交配に遅れが生じ、実験に必要な妊娠マウスが十分に得られなかった。このため解析に若干の遅れが生じており、それにともない平成26年度に予定していた消耗品購入が平成27年度に繰り越しとなった。
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次年度使用額の使用計画 |
平成27年度は実施計画に基づき、平成26年度からの繰り越し分とあわせて消耗品その他への支出を行う予定である。具体的には、学会発表のための国内・国外出張旅費に計40万円使用し、残りをピペット, チューブ、酵素・試薬類、抗体、サイトカイン、実験用マウスなどの消耗品購入に充てる予定である。
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