研究実績の概要 |
造血系と血管系は共にhemogenic endotheliumという胎生期にのみ存在する特殊な血管内皮細胞から発生する。そのため造血系の分化に重要な転写因子の多くは血管系と共通していることが、マウスやゼブラフィッシュを用いた研究から明らかになりつつある。 申請者らは「細胞直接リプログラミング法」によりETV2単独で成人皮膚線維芽細胞を機能的な血管内皮細胞に転換できることを報告した。ETV2はETSファミリー転写因子であり、胎児期の造血―血管系の発生に必須の因子であることはマウスやゼブラフィッシュの研究により明らかにされている。しかし申請者らは既に分化した体性細胞をETV2により血管内皮細胞に転換させることにより、ETV2は強力な血管内皮細胞誘導因子であることを示した。 ところが面白いことに、ETV2発現線維芽細胞は造血分化に必須の転写因子RUNX1, TAL1, GATA2を発現することを見出した。そこでETV2と共に20種類のhemogenic endothelium特異的転写因子を導入し、SCF, FLT3L, TPO, IL-3, IL-6の存在下でマウス骨髄ストローマ細胞株OP9細胞と共培養すると、CD45及びc-Kit陽性の血球様細胞が出現した。現在この血球様細胞のゲノムを解析することによりヒト血球の分化に重要な転写因子を同定を試みている。本研究成果よりiPS細胞を経ることなく皮膚から血液細胞を直接作製できる可能性が見出された。
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