研究実績の概要 |
B細胞を含むすべての血液・免疫細胞は造血幹細胞から作られる。その過程で多能性の造血幹細胞は徐々に分化能が限定されていき、最終的にB細胞にしかなれない前駆細胞に運命決定される。この運命決定は様々な転写因子やエピジェネティック因子によって制御されているが、詳細は明らかでない。特に、クロマチン修飾酵素複合体と相互作用することによって細胞の運命決定を制御することが示唆されている長鎖ノンコーディング(long non-coding: lnc)RNAの役割は不明である。申請者らは最近多分化能と自己複製能を兼ね備えた血液前駆細胞株(iLS細胞)を樹立した。この細胞を用いるとB細胞への運命決定における分子機構を調べることができる。そこで本研究ではこの培養系を用いてB細胞分化過程において特異的に働くlncRNAをスクリーニングし、その機能を明らかにすることを目的とする。 本年度は研究計画に従い、iLS細胞からB細胞への分化誘導、および経時サンプルの網羅的遺伝子発現解析を行った。経時サンプルはB細胞へ分化誘導後、0, 0.5, 1, 2, 4, 6, 8, 10, 12, 24, 48, 72, 96, 120, 144時間後(計15ポイント)に細胞を回収し、RNAを精製した。得られたRNAはRNA-seq法を用いて網羅的な遺伝子発現解析を行った。このデータからlncRNAを探索したところ、数多くのlncRNAがB細胞への運命決定過程で発現していることが明らかとなった。さらに、B細胞分化が進むに連れて発現が上昇するlncRNAも見つかった。現在、これらのlncRNAのB細胞分化における発現推移およびその機能を解析中である。
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