研究課題/領域番号 |
26670475
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研究機関 | 山梨大学 |
研究代表者 |
中尾 篤人 山梨大学, 総合研究部, 教授 (80317445)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | マスト細胞 / 時計遺伝子 / ヒスタミン / ヒスタミン合成酵素 / アレルギー |
研究実績の概要 |
本研究で研究代表者らは、アレルギーの中心的な細胞の1つである「マスト細胞は定常状態においても時計遺伝子依存的に自律的かつ概日性の脱顆粒反応を起こしている」という仮説を検証する。本研究成果は特発性慢性蕁麻疹など脱顆粒反応の誘因が明らかではないアレルギー疾患病態の理解に貢献する。 平成26年度はマスト細胞の時計遺伝子が実際にヒスタミン放出を概日性に制御しているか否かについてin vitro及びin vivoの実験系を用いて検討した。 野生型マウス及び時計遺伝子Clock変異マウスから骨髄由来マスト細胞(BMMCs)を取得し、通常の培養条件下において培地を4時間ごとに回収し培養上清中のヒスタミン濃度をELISAにて測定した。この実験によってマスト細胞が定常条件下でヒスタミンを自律的かつ概日性(約24時間周期性)に放出していること、またその放出の概日性は時計遺伝子Clockに依存していることが明らかになった。 またヒスタミン合成酵素(HDC)や脱顆粒反応に携わる遺伝子群の遺伝子発現を経時的に解析しマスト細胞の時計遺伝子タンパク質の標的分子について検討したところ野生型BMMCsでのHDCのmRNA発現には概日性がありClock変異BMMCsではその概日性が消失することを見いだしHDCの発現が時計遺伝子によってコントロールされていることが明らかになった。 さらに野生型マウス及びClock変異マウスから経時的に血液(血漿)を採取しヒスタミン濃度を計測した。その結果in vivoにおいてもマスト細胞はヒスタミンを自律的かつ概日性に放出していること、かつこの概日性の放出が時計遺伝子に依存していることが明らかになった。以上の結果からマスト細胞は自立的概日性にヒスタミンを放出しており、これは、時計遺伝子依存的でることが明らかになった。HDCの概日性の発現変動がこの機構に関与している可能性が高い。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の研究計画をほぼ100%遂行し良好な結果を得ているから。 すなわち「マスト細胞は定常状態においても時計遺伝子依存的に自律的かつ概日性の脱顆粒反応を起こしている」という仮説を検証することが主たるゴールであるがこの仮説が正しいことをin vitroおよびin vivoの実験系を用いてほぼ証明することができたため。
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今後の研究の推進方策 |
当初の研究計画どおり平成27年度は「マスト細胞は定常状態においても時計遺伝子依存的に自律的かつ概日性の脱顆粒反応を起こしている」ことについてのより詳細なメカニズムの解析ならびに慢性蕁麻疹患者の血漿サンプルを用いて解析を行い、本知見のより基礎的なメカニズムおよび臨床的意義について検討を行う予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
旅費について他の経費で充当したため。
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次年度使用額の使用計画 |
繰り越し費は予め計上していた140,000円と合わせて、平成27年度にマウス購入、細胞培養試薬等の物品費として使用する予定。
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