研究課題
GM-CSF(Granulocyte Macrophage colony-stimulating factor)は古くから造血因子として知られているサイトカインの一つであるが、近年GM-CSF産生Tヘルパー(Th)細胞が関節リウマチや多発性硬化症の動物モデルにおいて病因惹起性のThサブセットであることが明らかになってきた。本研究では、活性化Th細胞のGM-CSF産生制御に関わる分子基盤の包括的な理解と分子標的の臨床応用を視野に入れた研究を展開している。本年度、GM-CSF産生Th細胞の分化を誘導する特異的副刺激シグナル(Tnfrsf18)を同定した。TCR刺激との組合わせにより、細胞内染色によってGM-CSFのみならずIL-3の発現上昇を見いだした。これまで提唱されているTh1、Th2、Th17サブセットとはエフェクターサイトカインの発現パターンが異なっており、サイトカイン産生パターンから特に骨髄系細胞の分化・成熟化を誘導するユニークなThサブセットであると考えられる。また、試験管内におけるTh17誘導条件においてTnfrsf18刺激によるGM-CSF発現上昇が強く抑制されることから、従来考えられてきたTh17細胞が産生するGM-CSF発現機構とは異なった制御機構が存在することが示唆された。また、生体内からエフェクター/メモリーTh細胞を純化してTnfrsf18による再刺激を行ったところ、TNF、IL-17産生能に変化は見られなかったが、GM-CSF産生を有意に上昇させた。これらナイーブTh細胞と分化後エフェクターTh細胞に対する特異的効果は、GM-CSF特異的な免疫制御法開発に向けた有用な知見である。
2: おおむね順調に進展している
本研究課題では、活性化Th細胞のGM-CSF産生制御に関わる分子基盤の包括的な理解と分子標的の確立を目的とする。本年度の成果、即ち、Tnfrsf18刺激による新規のGM-CSF産生制御機構の同定は、研究の目的であるGM-CSF産生Th細胞のエフェクターサイトカイン制御法開発の鍵となる可能性があり、GM-CSF産生Th細胞が関与する様々な自己免疫疾患の治療標的分子につながる可能性がある。
本研究課題では、引き続き、GM-CSF産生制御に関わる分子基盤を明らかにするために、分子生物学的、構造学的、免疫学的手法を用いて詳細な検討を行っていく。次年度、Tnfrsf18シグナルとGM-CSF産生を橋渡しするアダプター分子や転写因子の検索を行い、より特異的なGM-CSF制御法開発に向けた分子メカニズム解明を目指す。また、Tnfrsf18欠損マウスを用いて、生体におけるGM-CSF産生Th細胞に対する影響を確認する。
すべて 2014
すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件) 学会発表 (1件) (うち招待講演 1件)
Science
巻: 346 ページ: 363-8
10.1126/science.1259077.
Immunity
巻: 40 ページ: 989-1001
10.1016/j.immuni.2014.04.019.