肥満を基盤としたリウマチ発症のメカニズムの解明

2014 年度 実施状況報告書

• 研究課題/領域番号: 26670479
• 研究機関: 東京医科大学
• 研究代表者: 藤田 英俊 東京医科大学, 医学部, 講師 (90571802)
• 研究期間 (年度): 2014-04-01 – 2016-03-31
• キーワード: リウマチ / 肥満 / シノビオリン / 小胞体ストレス

研究実績の概要

2013年4月リウマチ発症のリスク増大に肥満が関連することが報告された。また、関節リウマチ治療において、高い効果が期待される生物製剤による治療に対して抵抗性を示すケースが明らかになり、そのリスクファクターとして肥満が報告された。しかしながら、これら関節リウマチと肥満を結ぶ分子メカニズムは明らかとされていない。代表者らは、これまで小胞体ストレス応答に機能するシノビオリンに着目し、シノビオリンがリウマチ患者の滑膜細胞で高発現するリウマチ発症因子であること、さらには、マウスにおいて、シノビオリン遺伝子を欠失（ノックアウト）させると人工的におこす関節炎モデルであるコラーゲン誘導性関節炎発症に対して抵抗性を示すことを明らかとしてきた。また、シノビオリンがコラーゲンなどの分泌タンパク質を制御することにより、シノビオリンヘテロマウスでは組織線維化に対して抵抗性を有することを報告した。さらに、成獣マウスよりシノビオリン遺伝子を時期特異的にノックアウトするマウスでは、劇的な体重減少と白色脂肪の顕著な減少が認められた。以上の結果から、代表者らはシノビオリンがリウマチ発症と肥満とを結ぶ因子の一つであり、肥満における治療抵抗性の原因の一つであるという仮説を持つに至った。そこで、本研究ではこの仮説を証明することを目的とした。本年度は、肥満におけるシノビオリンの発現解析を行うとともに、脂肪特異的シノビオリンノックアウトマウス、B細胞特異的シノビオリンノックアウトマウスの表現型解析を行った。

現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

マウスにおける肥満とシノビオリンの発現についてはすでに明らかとし、ヒトのサンプルについても現在収集中である。各種のシノビオリンにおける組織特異的ノックアウトマウスの解析も進んでいる。また、シノビオリン阻害剤についても、肥満における効果を明らかとしている。

今後の研究の推進方策

ヒトにおける肥満とシノビオリン発現について、現在ヒト血液サンプルを収集している。また本年度は、関節リウマチにおけるシノビオリンの役割を明らかにするため、各種の組織特異的ノックアウトマウスを用いて、関節リウマチ発症について検討していく予定である。

次年度使用額が生じた理由

ヒトサンプルの収集状況が予定よりも遅れたため、サンプルの回収や解析に使用する試薬等の発注を次年度に繰り越したため。

次年度使用額の使用計画

ヒト血液からRNAやタンパク質を回収するための試薬を購入する予定である。

研究成果

• [雑誌論文] The E3 ligase synoviolin controls body weight and mitochondrial biogenesis through negative regulation of PGC-1β. (2015)
  • 著者名/発表者名: 6.Fujita H, Yagishita N, Aratani S, Saito-Fujita T, Morota S, Yamano Y, Magnus J.H, Inazu M, Kokuba H, Sudo K, Sato E, Kawahara K, Nakajima F, Hasegawa D, Higuchi I, Sato T, Araya N, Usui C, Nishioka K, Nakatani Y, Maruyama I, Usui M, Hara N, Uchino H, Eskil E, Nishioka K, Nakajima T.
  • 雑誌名: EMBO J. 巻: 34 ページ: 1042
  • DOI: 10.15252/embj.201489897
  • 査読あり / オープンアクセス / 謝辞記載あり
• [学会発表] リウマチ発症因子シノビオリンによるエネルギー代謝調節機構 (2014)
  • 著者名/発表者名: 藤田英俊、荒谷聡子、中島利博、中島若巳、西岡久寿樹、諸田沙織、内野博之、須藤カツ子
  • 学会等名: 第174回東京医科大学医学会総会
  • 発表場所: 東京医大（東京）
  • 年月日: 2014-11-01 – 2014-11-01
• [学会発表] リウマチ発症因子シノビオリンによる新規エネルギー代謝調節機構 (2014)
  • 著者名/発表者名: 藤田英俊
  • 学会等名: 第15回運動器科学研究会
  • 発表場所: ベルサール三田（東京）
  • 年月日: 2014-09-04 – 2014-09-05
• [学会発表] E3ユビキチンリガーセであるシノビオリンによる体重制御機構 (2014)
  • 著者名/発表者名: 藤田英俊、荒谷聡子、八木下尚子、西岡久寿樹、中島利博
  • 学会等名: 第58回日本リウマチ学会
  • 発表場所: グランドプリンスホテル新高輪（東京）
  • 年月日: 2014-04-26 – 2014-04-26