平成27年度は、PM2.5による上皮細胞のtight junction (ZO-1) 破壊を抑制する薬剤を検索した。 1.ディーゼル排気微粒子(diesel exhaust particles;DEP)による鼻粘膜のバリア破壊を予防する薬剤を検討した。従来から、ディーゼル排気微粒子はその構成成分による酸化ストレスを介して気道上皮細胞のバリア機能を低下させることが知られている。そこで、ヒト鼻粘膜上皮細胞株にディーゼル排気微粒子と同時に抗酸化剤N-アセチルシステイン(体内の抗酸化物質であるグルタチオンの前駆物質であるアミノ酸)を添加した。その結果、N-アセチルシステイン添加群ではタイトジャンクションは保護され、FITC標識したデキストランの上皮細胞透過性は抑制された。さらに 2.ブタクサ花粉で免疫したマウスにブタクサ花粉を点鼻する2日前にディーゼル排気微粒子と同時にN-アセチルシステインを点鼻して前処置すると、マウス鼻粘膜上皮細胞のタイトジャンクションは完全に保護され、花粉を点鼻してもくしゃみ回数の増加は全く認められなかった。
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