研究課題
慢性甲状腺炎(橋本病)は日本人の3~5%が罹患する極めて頻度の高い疾患で国民病の一つともいえる.この慢性甲状腺炎の患者の一部は,自己免疫的機序で精神神経症状を呈することがあり,橋本脳症といわれている.橋本脳症の症状は多彩であり,意識障害やてんかんで発症する急性脳症型,慢性精神病型,小脳失調型などの病型が存在する.橋本脳症の多くはステロイドが奏功する治癒可能な疾患である.申請者らは,橋本脳症に特異的な診断マーカーとして,血清の自己抗体(抗NAE抗体)を同定し,多施設からの多数例の解析依頼を受け,臨床情報が集積している.すでに,慢性甲状腺炎では,甲状腺ペルオキシゾーム(TPO)などに特有な遺伝子多型が報告されているが,橋本脳症に関する遺伝的検索はなされていない.本研究の目的は,橋本脳症(各種病型),脳症を呈さない橋本病,対照間で,ゲノムエクソン領域を主体とした網羅的解析を行い,橋本脳症の発症や病態に関連する遺伝子群を探索することにある.これによって,橋本脳症における,免疫関連遺伝子や甲状腺関連遺伝子などを含めた遺伝子背景を明らかにすることができる.今年度は,橋本脳症22例,橋本甲状腺炎41例,対照群33例,合計96例についてイルミナ社のHumanExome BeadChipを用いて24万個の一塩基多型を解析した.約2500例の剖検例を対照として関連解析を行った.来年度は,引き続き症例の蓄積を行い,ゲノムエクソン領域を主体とした網羅的解析を拡大する。
2: おおむね順調に進展している
96例について24万個の遺伝子多型を解析した。
引き続き、症例の蓄積を行い、遺伝子多型解析を拡大する。
DNA試料の収集に時間を要したため。
DNA試料数が揃った時点で、HumanExome BeadChipでの解析を行う。
すべて 2015 2014
すべて 雑誌論文 (5件) (うち査読あり 5件、 謝辞記載あり 5件)
Genes Chromosomes Cancer
巻: 54 ページ: 122-128
10.1002/gcc.22227
Journal of Bone and Mineral Metabolism
巻: in press ページ: in press
10.1007/s00774-014-0636-0
Physiological Genomics
巻: 46 ページ: 207-215
10.1152/physiolgenomics.00182.2013
巻: 46 ページ: 497-504
10.1152/physiolgenomics.00027.2014
Genes & Nutrition
巻: 9 ページ: 416
10.1007/s12263-014-0416-4