研究課題
B型肝炎ウイルス(HBV)は、世界に3億5千万人のキャリアが存在し、B型肝炎や肝硬変、肝癌に進展する。慢性B型肝炎の治療として、現在抗ウイルス薬やインターフェロンによる治療が行われているが、血中のHBs抗原陰性、HBV DNA陰性になった場合でも、核内にHBV covalenty closed circular DNA (cccDNA)が存在するような潜伏感染が報告されており(オカルトHBV)、cccDNAを駆除する治療薬、治療法は確立されていない。そこで、cccDNAの完全排除、複製・粒子産生の抑制を目的として、CRISPR/Cas9およびCRISPRiによるHBV ウイルス排除の試みた。昨年度はCRISPR/Cas9による切断によりpregenome (pg) RNA コピーを15~20%に低下させ、pgプロモーター活性を20~28%に低下できることを明らかにした。本年度は、CRISPRiによるHBV RNA転写抑制を試みた結果、pgRNAコピーを約38%に、pg プロモーター活性を4~18%に低下させるできた。またEnh1/Xプロモーターの転写抑制により培養上清中のHBs抗原は36%、HBe抗原は48%に低下させることができた。また、HuH7/pEB-HBV、HepG2.2.15細胞に組換えレンチウイルスを感染させ検証した結果、HBV pgRNAコピーを43%(GT Ae)、38%(GT Bj)、60%(GT Ce)、34%(GT D)に減少させることができた。本研究では、CRISPR/Cas9システムだけでなく、CRISPRiによるHBV RNAの転写抑制、HBs抗原, HBe抗原の産生抑制を示した。今後、肝臓への遺伝子デリバリー技術革新、CRISPR/Cas9システムの改良により、より効果的で安全な治療法となることが期待される。
すべて 2016 2015
すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件、 オープンアクセス 1件、 謝辞記載あり 1件) 学会発表 (3件) (うち国際学会 2件)
PLoS Pathog
巻: 12 ページ: e1005441
10.1371/journal.ppat.1005441.
月刊細胞
巻: 47 ページ: 566-570