研究課題/領域番号 |
26670483
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
杉田 昌彦 京都大学, ウイルス研究所, 教授 (80333532)
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研究分担者 |
高折 晃史 京都大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (20324626)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 細胞・組織 / ウイルス / 免疫学 / 脂質 |
研究実績の概要 |
エイズウイルスNefタンパク質のミリスチン酸修飾を標的とした細胞傷害性T細胞応答について、アカゲザルエイズモデルの詳細な分子機構の解明をもとにヒトへの展開の糸口を見いだす研究を展開した。サル免疫不全ウイルスNefタンパク質由来のリポペプチド(C14nef5)を特異的に認識するT細胞株(2N5.1)に対してリポペプチド抗原提示能を有する候補分子を同定した。これをコードする遺伝子を単離し、さらに大腸菌へのコドン使用頻度の最適化を行ったうえで可溶化リコンビナントタンパク質の調製を行った。得られたリコンビナントタンパク質がC14nef5を特異的に結合することをOctetを用いて実証した。さらにリコンビナントタンパク質をコートしたプレートにC14nef5をロードすることにより2N5.1細胞株の活性化を誘導できることを示した。以上からこの分子がリポペプチド抗原提示分子であると結論づけた。このリコンビナントタンパク質にC14nef5をロードしたのち、効率的に結晶化させる条件を探索し、最適条件を決定した。得られた結晶について理研大型放射光施設(Spring-8)においてX線結晶構造解析を行い、1.7オングストロームの解像度での構造を決定した。この構造情報ならびに結合様式の情報に基づき、ヒトリポペプチド提示分子の候補を絞り込んだ。また今後の免疫応答の解析を推進すべく、上記アカゲザルリポペプチド提示分子を発現したトランスジェニックマウスを作出した。このマウス由来の骨髄樹状細胞はC14nef5と2N5.1細胞株に提示できたことから、リポペプチド提示分子の機能的発現が確認できた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
アカゲザルリポペプチド抗原提示分子の同定およびそのX線結晶構造解析を完了し、ヒト抗原提示分子の推定に進んだ点において、当初の目標を十二分に達成できた。さらに、今後の個体レベルでの解析を視野にトランスジェニックマウスの作出に成功したことは、想定以上の進展と言える。
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究推進において、2つの独立した研究アプローチ、すなわち「アカゲザルからヒトへ」および「臨床からベンチへ」を進め、最終的にその融合を図る。前者はアカゲザル研究成果を基盤として推定したヒトリポペプチド抗原提示分子候補について免疫生化学的解析を進め、その機能を明確にする。後者は、エイズウイルス感染者より提供を受けた末梢血単核球を用いてリポペプチド特異的細胞傷害性T細胞の存在とその機能を明らかにする。この両解析の結果を統合し、リポペプチド免疫の新視点からエイズウイルス感染症の実態を明らかにし、「リポペプチドワクチン」の可能性も含めその制御法の提唱を目指す。
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次年度使用額が生じた理由 |
京都大学霊長類研究所共同研究拠点の利用が可能となり、アカゲザル末梢血の提供を無償で受けることができたため、新規アカゲザルの購入・飼育に関わる支出が低減できたこと、またアカゲザルリポペプチド抗原提示分子の同定とX線結晶構造解析が極めて順調に進展したため、物品費が大幅に縮小できたことが主たる理由である。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度においてヒトリポペプチド提示分子の同定とX線結晶構造解析を推進するとともに、当初予定していなかったヒトリポペプチド提示分子を発現したトランスジェニックマウスの作製を複数の候補分子に対して行う。またエイズウイルス感染者の免疫解析および細胞株の樹立を当初の予定より拡大して行う。
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