研究課題
エイズウイルスNefタンパク質のミリスチン酸修飾を標的とした細胞傷害性T細胞応答について、前年度に引き続き、アカゲザルエイズモデルの詳細な分子機構の解明をもとにヒトへの展開を見出す研究を推進した。まずアカゲザルリポペプチド提示分子LP1を同定し、Nefリポペプチド(C14nef5)を結合した複合体のX線結晶構造を解明することに成功した(Nature Communications, 2016)。その結果、このMHCクラス1アリルにおいては、ミリスチン酸を収納する疎水性でサイズの大きいBポケットが存在することがわかった。また比較的小さなFポケットを有し、ミリスチン酸修飾モチーフを構成するセリンやスレオニンの結合に適した構造を有していることが明らかとなった。さらにAポケットとBポケットの間のチャネルは空間的に塞がれており、MHCクラス1:ペプチド複合体と異なり、Aポケットには抗原がアクセスしないことが見出された。一方、第2のアカゲザルリポペプチド提示分子LP2を同定し、その遺伝子単離ならびにリコンビナントタンパク質の調製を進めた。リポペプチド複合体の結晶化条件の最適化を終え、理研大型放射光施設(SPring8)でのX線結晶構造のデータ収集を完了した。得られた基礎データをもとに、アカゲザルリポペプチド提示分子に共通で、旧来のペプチド提示分子には見られない構造的特質を見いだし、これをもとにヒトリポペプチド提示分子候補の絞り込みを行った。さらに遺伝子の単離あるいは合成を完了し、ヒトリポペプチド提示分子の結晶構造の解明に向けた準備を整えた。
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Nature Communications
巻: 7 ページ: 10356
10.1038/ncomms10356
http://www.virus.kyoto-u.ac.jp/Lab/SugitaLab.html