研究課題/領域番号 |
26670488
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研究機関 | 鈴鹿医療科学大学 |
研究代表者 |
伊奈田 宏康 鈴鹿医療科学大学, 薬学部, 教授 (90283522)
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研究分担者 |
河野 光雄 三重大学, 医学(系)研究科(研究院), 講師 (00234097)
平井 一行 鈴鹿医療科学大学, 薬学部, 助手 (10580847)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | ノロウイルス / ワクチン / ヒトパラインフルエンザ2型ウイルス |
研究実績の概要 |
ノロウイルスは、世界中で発症する感染性胃腸炎の主な原因ウイルスで、わが国でも特に冬期に猛威を振るっている。国内や施設における集団感染は社会問題にもなり、特に小児や高齢者では深刻である。しかし、ノロウイルス感染症に対する根本的な治療法はなく、世界中でワクチンの開発が望まれている。最近、ウイルス様粒子を用いたワクチンの開発が進められているが、ウイルス排泄や血液型の問題なども示唆されている。本研究では、ヒトパラインフルエンザ2型ウイルス(PIV2)ベクターを用いて、体内で強力な免疫誘導環境を調節することで、より効果の強いワクチンを開発するための検討を行う。 今回我々は、わが国で最近流行したノロウイルスであるGⅡ.4株のRNAから、外殻蛋白を構成しウイルスの抗原性を提示するVP1と外殻蛋白の構成に必要なVP2をクローニングした。ノロウイルスは、核酸の変異が頻回に起き抗原性を変化させていることが示されている。今回我々がクローニングしたVP1およびVP2も、GⅡ.4.シドニー株と比べて、アミノ酸レベルで数か所の変異が認められたため、これらの変異をすべて改変し直し、シドニー株と一致したVP1およびVP2遺伝子をクローニングした。これらの遺伝子を、ウイルス骨格を発現しないことで非増殖型ウイルスとなるベクター(PIV2ΔM)に導入した。現在、培養細胞にて非増殖型VP1発現ウイルスおよびVP2ウイルスを作製中である。また、細胞性免疫を強力に誘導する遺伝子を組み込んだ非増殖型ウイルスの作製は完了している。 ところで、昨年冬は、従来の抗原性と全く異なるタイプのノロウイルスが局所的に流行し、今後も流行する可能性が考えられる。そこで我々は、この新しい株のRNAあるいはcDNAより、VP1およびVP2のクローニングを進めており、同様に新しい株の非増殖型VP1およびVP2発現ウイルスを作製する予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
RNAウイルスであるノロウイルスは、検出に必要な部位と我々がクローニングする部位が異なり、一部は核酸の分解が進んでいた。また、ウイルスの変異が予想以上に認められていた。3つ以上のRNAからクローニングを行ったが、どれも異なる変異を起こしていたため、これらの変異を統一したものに改変しなおす必要が生じたことがある。また、ウイルスベクターへの組換えは順調に行うことができたが、培養細胞でのウイルス粒子の作製が原時点で成功していない。これは、ノロウイルスのウイルス様粒子の作製が、バキュロウイルスで行われていること、ノロウイルスの培養系が確立して異なことなどにも関与しているかもしれないが、細胞に導入するベクターの精製度をより高め、作製している。また、ノロウイルスの抗原性を有する最小限の部位をウイルスベクターに組み込み、ワクチンを作製することを試みる。
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今後の研究の推進方策 |
今後あるいは既に流行しているかもしれないノロウイルス株のVP1およびVP2をクローニングし、同様のワクチンを作製する。そして、ワクチン効果を検討し、ノロウイルスの変異に対応できるようなワクチン開発へ研究を進めていく予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
現時点は、動物実験に使用する量のウイルスワクチンを大量に作製する直前の段階であり、当初計画していた大量にワクチンを作製する為に必要な細胞培養関連試薬類や消耗品および予備実験として予定していたマウスの飼育費用を次年度に繰り越すことになった。
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次年度使用額の使用計画 |
動物実験に必要な量のウイルスワクチンを作製するための費用、並びに新たな株からのワクチン作製、動物(マウス)におけるワクチン効果の検討用に使用する予定でいる。
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