研究課題/領域番号 |
26670491
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
水口 雅 東京大学, 大学院医学系研究科(医学部), 教授 (20209753)
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研究分担者 |
池田 和隆 公益財団法人東京都医学総合研究所, 精神行動医学研究分野, 分野長 (60281656)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 自閉症 / 結節性硬化症 / モデル動物 / 行動解析 / mTOR系 |
研究実績の概要 |
結節性硬化症(TSC)モデルマウス(Tsc1+/-マウス、Tsc2+/-マウス)は社会的相互作用の低下など、ヒトTSCと類似の自閉症様症状を呈する。同症状は成獣に対するmTOR阻害薬投与で改善する。本研究は乳幼仔に対するmTOR阻害薬投与で自閉症発症を予防することを期待して開始した。しかし平成26年度に実施した予備実験では行動に対する好影響が観察されなかった。その理由として(1)ヒトTSCにはてんかんがあるが、モデルマウスにはないために、てんかんが行動発達に及ぼす悪影響がこのモデルでは反映されていない、(2)行動試験に用いた社会的相互作用試験がこの実験には不向きである、の2つが考えられた。そこで平成27年度から(1)乳幼仔期に実験的にてんかん発作を生じてその後の行動発達への影響を調べる、(2)行動試験に別の試験を導入する、の2つの方針を立て、それらの目的に沿う実験を行った。平成28年度に実験結果がほぼ出揃い、(1) カイニン酸、ペンチレンテトラゾール、NMDAなどの薬物で乳幼仔にけいれんを誘発した際の発作閾値は、TSCマウスと野生型の間で差がなく、Tsc1、Tsc2のハプロ不全のみではてんかん発作は生じないこと、本モデルはてんかんが行動発達に及ぼす影響を検討するには不適であることが判明した。(2)新しい行動試験である相互性社会作用試験の導入により、成獣のみでなく乳幼仔においても高い再現性をもって社会性を評価できることが判明した。TSCマウス乳幼仔に対してmTOR阻害薬を長期投与すると、効果として脳の過成長が是正されること、副作用として胸腺、脾臓の萎縮と脂肪肝が生じることを見出した。ヒトTSCの脳症状のmTOR阻害薬による薬物治療の導入に向けた基礎データを、TSCモデル動物を用いて蓄積することができた。
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