研究課題
低身長は小児内分泌領域では最も多い症状であり、小児期に治療することが必要である。一部の患者では成長ホルモン治療が有効であるが、注射剤であるため、より負担のない治療薬の開発が望まれている。我々は、著明な低身長をきたす疾患の原因として、新規因子の同定に成功した。この因子は成長への作用があることが明らかであるが、その機序は不明である。そこで、我々が新規に同定した因子の低身長の発症機序の解析を行う。最終的な目標は、本因子の低身長発症機序を利用した、低身長に有効な治療薬を開発することである。我々が同定した低身長関連遺伝子FAM111Aは、その機能が不明である。また、認められた変異は、異なる家系で共通していることなどから、変異には特有の機能が獲得されることが予想された。そこで、まず、この遺伝子を培養細胞内に過剰発現させ、細胞の増殖、分化、蛋白誘導を観察している。細胞は、特に成長と関連する骨細胞、軟骨細胞を用いた。また、当遺伝子の機能と変異による影響を、個体レベルで観察するために、モデル動物の作成を行っている。まずトランスジェニックマウス作成用ベクターの構築を行った。今後、トランスジェニックマウス作成を開始し、表現型や骨軟骨の組織解析を行う。
3: やや遅れている
トランスジェニックマウスの作成のための費用が不足しているため、まだ開始できていない。
トランスジェニックマウスの作成を開始する予定である。トランスジェニックマウスができたら、まず、その表現型を詳細に解析する。特に、ヒトでみられる成長障害、副甲状腺機能、骨、眼に注目して観察を行う。また、成長障害は、出生後に顕著であることから、特に出生前・出生後の成長を比較し、成長障害の発生する時期を特定する。さらに骨軟骨組織における骨代謝関連蛋白・遺伝子の発現を解析し、野生型との相違点をみつける。細胞内発現系による解析も平行してすすめ、本因子による骨軟骨細胞への作用解明を行う。FAM111Aと関連することが予想される候補蛋白をはじめ、FAM111A発現によって変化する蛋白の検索を行う。
本年度の経費ではトランスジェニックマウスの作成の費用が不足したため、開始できなかった。
次年度の経費を合わせて、トランスジェニックマウスの作成を開始する予定である。動物飼育のための費用、飼育補助のための人件費、また消耗品費用は相当かかるため、次年度と繰越金を合わせた費用はすべて使用する予定である。不足する可能性があるが、その分は他の研究費で補う予定である。
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