研究課題
小児に対する造血幹細胞移植では、様々なウイルス関連合併症が相次いで現れるため、ウイルス感染症制御が移植の成否の鍵を担っている。しかし、我々の眼に触れているウイルス感染は、氷山の一角に過ぎない。本研究では、次世代シーケンサーよる網羅的sequencingを用いて、包括的な宿主およびウイルスの遺伝子解析を行い、生体内ウイルス集団(Virome)に関して、1) 造血幹細胞移植患者における既知のウイルスの動態、 2) 移植患者における未知のウイルスの存在の有無、3) ウイルスの共感染がもたらす相互作用、4) これらのウイルスによる新たな移植関連合併症の発見とそのメカニズムの解明、を明らかにすることを目的としている。まず、初年度は、検体の採取とシステムの構築に従事した。対象は名古屋大学医学部附属病院小児科に入院し、同種造血幹細胞移植を受けた小児。患者より全血2.5mLを採血後、DNA/RNAを抽出。extra DNA、TrueSeq RNAなどのキットを用いてライブラリーの作成を行った。その後、MiSeq Reagent Kitを用いて、次世代シーケンサーによる全塩基配列の解読を行った。データ解析は、シーケンサーによって得られた結果を、国立感染症研究所が構築したパイプラインを用いて既知の微生物の遺伝子配列との一致を確認することで、原因微生物の同定とした。解析した患者血液より、アデノウイルスDNAなどが検出されている。
2: おおむね順調に進展している
移植後患者の生体内ウイルス集団を明らかにするための、システムを構築し、少数例ではあるが、網羅的sequencingによりウイルス核酸を検出している。
平成27年度は、症例数を増加し、以下を重点的に解析する。1) 移植時に初感染/活性化することが知られている既知のウイルス(EBウイルス、サイトメガロウイルス、Human herpesvirus 6B、単純ヘルペスウイルス、水痘・帯状疱疹ウイルス、BKウイルス、JCウイルス、アデノウイルス、パルボウイルスB19)の動態。2) ガンシクロビル先制/治療投与に伴うサイトメガロウイルス変異体集団の動態。特にガンシクロビル耐性に関連するとされているウイルスDNAポリメラーゼ(UL54)遺伝子およびプロテインキナーゼ(UL97)遺伝子の変化。3) ウイルス初感染もしくはViromeに相応して、患者白血球の自然免疫や炎症に関与する遺伝子群(特にインフラマソーム系)の動態。これまで造血幹細胞移植では報告のない既知ウイルスが検出された場合には、診療録より収集した臨床情報から、該当ウイルスが何らかの移植関連合併症と関連していないかどうかを検証する。
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Autoimmunity
巻: 47 ページ: 193-200
doi:10.3109/08916934.2013.879863