研究課題/領域番号 |
26670503
|
研究機関 | 愛媛大学 |
研究代表者 |
石井 榮一 愛媛大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (20176126)
|
研究分担者 |
江口 真理子 愛媛大学, 医学(系)研究科(研究院), 准教授 (40420781)
江口 峰斉 愛媛大学, 医学部附属病院, 講師 (50420782)
|
研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2016-03-31
|
キーワード | 小児血液学 / 白血病 / 融合遺伝子 |
研究実績の概要 |
MLL-AF4融合遺伝子のゲノム上の転座切断点は、MLL遺伝子上のイントロン5からエクソン11までの約8.3kbと、AF4遺伝子のイントロン3から6(約48kb)に集中している。これらの領域に0.7~2kbの間隔で複数のプライマー(MLL側に12個、AF4側に32個)を設計し、PCRにて転座切断点の検出を試みた。MLL-AF4融合遺伝子陽性白血病細胞株を検体として用いた。AF4遺伝子上の32個のリバースプライマーを8個ずつ4セットに分けてMLL遺伝子上の12個のフォワードプライマー全てを混合して行ったPCRでは各細胞株で少なくとも一つのセットで増幅産物が得られ、MLL-AF4融合遺伝子を検出可能であった。12個のフォワードプライマーと32個のリバースプライマーを混合して1本のチューブで行ったPCRでも各細胞株で同様にMLL-AF4融合遺伝子を検出可能であった。 TEL-AML1融合遺伝子に関しては、ゲノム上の転座切断点はほとんどの症例で、TELのイントロン5(約15kb)とAML1遺伝子のイントロン1(約150kb)に集中している。TEL遺伝子のイントロン5に15個のフォワードプライマーを設定し、AML1遺伝子のイントロン1に52個のリバースプライマーを設定した。MLL-AF4融合遺伝子と同様に、AML1遺伝子上のリバースプライマーを13個ずつ4セットに分けてTEL遺伝子上の15個のフォワードプライマーと混合して行ったPCRでは十分にゲノム上のTEL-AML1融合遺伝子を検出可能であった。これらの方法は白血病細胞株のみでなく、患者検体を用いた解析にも問題なく応用でき、迅速にゲノム上の転座切断点を同定できる実験系を作製できた。 これらのPCRの検出感度は白血病細胞のDNA 100 pgまでであり、この方法での融合遺伝子の検出には白血病細胞が20個程度必要であると思われた
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
MLL-AF4およびTEL-AML1融合遺伝子のゲノム上の転座切断点の迅速な同定方法は確立できた。ごく少数の白血病細胞を含む血液検体での融合遺伝子の検出は試行中であるが、まだ方法は確立していない。
|
今後の研究の推進方策 |
基本的は迅速検出方は確立したが、白血病細胞の混入が少ない場合にはPCRでの特異的な産物の増幅が不安定であり、方法を改善する必要がある。当初の目的である早期診断のためのスクリーニングへの応用には実験方法のさらなる改良が必要であり、今後も検討を続けていく。また方法が確立した後に実際に臍帯血などを用いて、TEL-AML1、MLL-AF4融合遺伝子のスクリーニングを行い、白血病の早期診断への応用の可能性について検討する予定である。
|
次年度使用額が生じた理由 |
初年度に本研究計画のために購入予定であったPCR装置(Applied Biosystems Veriti 96-Well Fastサーマルサイクラー、一式98万円)の購入を見合わせ、本研究室で保有するPCR装置および学内共同実験施設のPCR装置を使用したため、当初予算より使用経費が少なくなり、次年度使用額が生じた。
|
次年度使用額の使用計画 |
研究計画の遂行に高性能なPCR装置が必要となる可能性は高く、次年度に繰り越した予算を用いて必要な装置の購入を行う予定である。
|