研究課題
先天性心疾患の外科治療では人工血管が多く使用されており、小児に理想的な人工血管とは、異物の残存や石灰化がなく、成長する可能性があるものと考えられている。さらに動脈グラフトには体血圧に耐えられる高い弾性が必要である。しかしながら理想的な動脈グラフトは近年の顕著な再生医学の進歩にも関わらずいまだ実現していない。我々は先行研究で、ラット大動脈平滑筋細胞に細胞外基質の薄膜を作ることで細胞を積層し、高い弾性を有する多層の三次元平滑筋細胞シートを作製することに成功した。先行研究の技術をもとに、本研究ではヒト臍帯動脈平滑筋細胞を用いて生体素材のみからなる小児用の新規動脈グラフトを開発することを目的とした。ラット新生児大動脈平滑筋積層細胞体の厚みは15層の場合約200 マイクロメートルとなった。重層された細胞シートの弾性をDMT社のティッシュープラーを用いて張力を測定した。この2方向の引っ張り試験より、この平滑筋細胞積層体の張力はマウス大動脈の中膜とほぼ同等であることが確認された。ラットの細胞シートはチューブ状に加工することで、チューブグラフトとして移植することができ、張力測定により、破断圧力も1400 mmHgを超えることがわかった。さらに、ヒトへの応用に向けて、ヒト臍帯血管平滑筋細胞を同様の方法で積層することに成功した。ヒトの細胞シートはパッチグラフトとしてヌードラットに移植し、3か月までの開存を確認することができた。
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