研究課題
1. 母体低栄養モデルの作製:母獣の摂餌制限(-30%)を妊娠10.5-18.5日に行い、胎生期低栄養マウスモデルを作成した。胎生18.5日でも野生型でも出生体重が有意に低下した。2. 母体高食塩食モデルの作製:母獣の摂餌中塩分(0.9% wt/wt)を妊娠10.5-19.5日に4% wt/wtに増加させたモデルを作製した。さらにWNK3ノックアウトモデルを用いて母体塩分負荷モデルを作製した。3. GAD67ヘテロ欠損と母体拘束ストレス負荷の交互作用:母体拘束ストレス(妊娠15日目から1回45分の拘束ストレスと光ストレスを毎日3回3日間)はGABA合成酵素のGAD67ヘテロ欠損(GAD67+/GFP)仔の内側線条体原基での(生後にparvalbumin陽性となる)GABA細胞の発生を選択的に障害した。そこで、母体拘束ストレスを野生型母マウスに与え、同腹のGAD67+/+仔でBrdUによる細胞発生のアッセイを行ったところ、発生障害は見られなかった。従って、母体ストレス(環境要因)とGAD67ヘテロ欠損(遺伝要因)が重複して初めて、内側線条体原基でのGABA細胞の発生が阻害されることが証明された。
2: おおむね順調に進展している
WNK3-KOマウスの繁殖に苦労したが、WNK3はX染色体随伴遺伝子なので、WNK3-KOの雄とWNK3-hetroの雌の交配により、雄の出生仔はWNK3-KOかWNK3-wildの何れかになるので、今後はlittermateの雄を実験対象として用いる。本年度の成果として、学会や論文としての公開もできている。計画全体としては、26年度に予定の大部分を実行でき、特に計画の大きな変更もなく、ほぼ予定通りの目的を達成できた。したがって、残りの実験を27年度と28年度年度で達成するめどができた。
1.GAD67-GFP knock-in マウスへの低栄養負荷:我が国では妊婦のダイエット志向や妊娠中の体重増加への誤った考え方からか、低出生体重児が年々増加傾向にあり年間約10 万人にも達し問題化している。低栄養も拘束ストレス同様にHPA軸を刺激して血中グルココルチコイドを増やす。重要なのは、低出生体重が自閉症や統合失調症などの精神疾患のリスクを高めるというエビデンスである。そこで、母獣の摂餌制限(-30%)を妊娠10.5-18.5日に行い、胎生期低栄養モデルを作製する。まず、母仔双方のGAD67‐低栄養相互作用を検討するため、野生型母体とGAD67ヘテロ母体の低栄養モデル各々に関して、野生型胎仔とGAD67ヘテロ胎仔の体重およびコルチコステロン濃度をRIA法で測定し、母体拘束モデルの結果と比較して、ストレスモデルとしての有用性を検討する。2. Wnk3 KOマウスの大脳皮質神経細胞の電気生理学的解析:WNK-SPAK/OSR1-NKCC1/KCC2のリン酸化カスケードはClホメオスタシスを変化させGABA作動性抑制のトーンを変化させる。そこで、まずはWnk3 KOマウスの神経細胞の全般的な電気生理学的特性の変化を解析する。3.Wnk3 KOマウスへの母体高食塩食負荷:食餌塩分量の変化にWNK-SPAK/OSR1-NKCC/KCCのリン酸化カスケードが素早く応答し、電解質や水分量のホメオスタシスが維持されることが知られる。また、このカスケードの何らかの異常は統合失調症でも自閉症でも示唆されており興味深い。そこで、Wnk3 KOマウス母体に高食塩食負荷を行い、高食塩食やWNK3が胎仔脳発達に与える影響をみるモデルとする。
当初は物品費¥738,000・旅費¥108,000・その他¥54,000を計上していたが、消耗品は大部分が汎用的な物品であったため、在庫分から先に使用した。在庫分が存外に多かったため、本来新規購入に充てる予定であった物品費を次年度に回すこととした。旅費とその他の費用はほぼ予定通りに使用した。
主に消耗品費や旅費として利用する。また、現在実験に使用している現有備品が老朽化しており、もしも不具合が生じて実験の遂行に支障が生じた場合は、その修理もしくは代替品の購入に要する費用の一部とする。
すべて 2015 2014 その他
すべて 雑誌論文 (7件) (うち査読あり 6件、 オープンアクセス 6件) 学会発表 (10件) (うち招待講演 1件) 備考 (1件)
Frontiers in Cellular Neuroscience
巻: 9 ページ: -
10.3389/fncel.2015.00004
The Journal of Physiology
巻: 592 ページ: 2153-2168
10.1113/jphysiol.2014.271700
巻: 8 ページ: -
10.3389/fncel.2014.00088
Translational Psychiatry
巻: 4 ページ: -
10.1038/tp.2014.13
PLoS ONE
10.1371/journal.pone.0107099
Frontiers in Neuroscience
10.3389/fnins.2014.00387
Clinical Neuroscience
巻: 32 ページ: 751-756
http://www.hama-med.ac.jp/uni_education_igakubu_igaku_seiri1.html