研究課題
1.GAD67-GFP knock-in マウスへの低栄養負荷:母獣の摂餌制限(-30%)を妊娠10.5-18.5日に行った胎生期低栄養モデルで、GAD67遺伝子型‐低栄養の相互作用を野生型母体とGAD67ヘテロ母体の低栄養モデル各々に関して、野生型胎仔とGAD67ヘテロ胎仔を用い母仔双方で検討した。母体血中コルチコステロン(CORT)濃度は、栄養制限によって野生型でのみ有意に上昇し、GABAがCRH分泌増加に働く可能性が示唆された。母体CORTの影響を排するため、ヘテロ母体由来の胎仔で検討した結果、ACTH、CORT値はヘテロ仔でのみ有意に上昇し、胎仔では母体と逆のGAD67‐低栄養相互作用が認められた。2. Wnk3 KOマウスの大脳皮質神経細胞の電気生理学的解析:WNK-SPAK/OSR1-NKCC1/KCC2のリン酸化カスケードはClホメオスタシスを変化させGABA作動性抑制のトーンを変化させるので、Wnk3 KOマウスの神経細胞の全般的な電気生理学的特性の変化を解析した。静止膜電位が深く、膜抵抗減少、発火閾値上昇、発火間膜電位上昇により、連続発火など神経興奮性が低下していた。また、抑制性シナプス活動が興奮性シナプス活動に比べ上昇していた。3.食餌塩分量の変化にWNK-SPAK/OSR1-NKCC1/KCC2のリン酸化カスケードが素早く応答する。視床下部はKCC2が最も早く胎生期から発現するので、WNK1-SPAK/OSR1が下流のKCC2のリン酸化を介して、どのようにCl-ホメオスタシスを制御し、高食塩食や低栄養時のGABA作用を変化させ交互作用や神経発達に影響するのかを、KCC2のリン酸化部位特異的に変異を導入し持続的にKCC2のリン酸化状態を疑似できる変異マウスをKahle (Yale大) との共同研究で入手し検討した結果、神経機能発達に異常が見られた。
2: おおむね順調に進展している
本年度の成果として、学会での公開もできている。27年度計画としては、大部分を実行でき、ほぼ予定通りの目的を達成できた。加えて、塩分負荷モデルより直接的なリン酸化部位変異KCC2発現マウスの系を立ち上げることが出来たので、残りの計画を28年度年度で達成するめどができた。
1.GAD67ヘテロ欠損母体ストレスモデル胎仔脳の網羅的DNAメチル化解析:当該モデルではパルブアルブミン陽性GABA細胞が特異的に減少する。RRBS法でのパイロットスタディの結果、GABA細胞の発生・移動・シナプス可塑性に関連する、Dlx2, Fktn, Nkx6-2、Cdk5r2, Pax6などの遺伝子のメチル化が亢進していた。これらの蛋白質の発現変化を確認するとともに、GABA機能関連分子の機能的変化を電気生理学的に解析する。2.KCC2のWNK-SPAK-OSR1によるリン酸化部位に変異を導入したマウス胎仔脳の神経細胞の発生・移動・神経機能の解析:EdUによる細胞分裂アッセイで導入当日に発生した細胞(EdU陽性)を同定し、脳室帯での皮質板細胞、内側線条体原基でのGABA細胞、第三脳室周辺でのCRH細胞などの発生と移動を解析する。また、2光子顕微鏡でシナプス形態を観察する。3.タウリントランスポーターKOマウスの大脳皮質神経細胞の電気生理学的解析:タウリンはWNK-SPAK/OSR1-NKCC/KCCのリン酸化カスケードを活性化する。低栄養でもタウリンが減少し、また塩分や細胞容積の調節と関係する。タウリントランスポーターKOマウスにおける細胞内タウリンが減少した状態での神経発達を、大脳皮質神経細胞の膜特性およびシナプス特性で解析する。また、タウリン欠乏によるリン酸化カスケードの変化を網羅的リン酸化アッセイで解析する。4.前年度に見出した所見の検討:母体ではGABAがCRH分泌増加に働く可能性が示唆されたので、正中隆起へのCRHニューロン軸索終末へのGABAの投射の有無、ある場合はその投射元、さらにGABA作用が興奮性か否かを、2光子顕微鏡によるCaイメージングで検討する。また、胎仔では母体と逆の現象が認められたので、上記の発達過程を胎仔でも確認する。
当初は物品費¥738,000・旅費¥108,000・その他¥54,000を計上し混合ガス・実験マウス等の購入及びマウス飼育管理費・論文投稿料に充てていたが、実験に使用する消耗品については大部分が汎用的な物品であったため、在庫分から先に使用した。在庫分が存外に多かったため、本来新規購入に充てる予定であった物品費を次年度に回すこととした。
主に消耗品費や旅費として利用する。また、現在実験に使用している現有備品が老朽化しており、もしも不具合が生じて実験の遂行に支障が生じた場合は、その修理もしくは代替品の購入に要する費用の一部とする。
すべて 2016 2015 その他
すべて 雑誌論文 (3件) (うち国際共著 1件、 査読あり 3件、 オープンアクセス 3件) 学会発表 (12件) (うち国際学会 1件、 招待講演 1件) 図書 (1件) 備考 (1件)
Scientific Reports
巻: 5 ページ: ‐
10.1038/srep15199
Brain Research
巻: 1601 ページ: 31-39
10.1016/j.brainres.2015.01.007
Frontiers in Cellular Neuroscience
巻: 9 ページ: ‐
10.3389/fncel.2015.00371
http://www.hama-med.ac.jp/uni_education_igakubu_igaku_seiri1.html