研究実績の概要 |
我々は臍帯血を用いた新生児の自然免疫応答の解析をすすめ、成人と比較した新生児の自然免疫の未熟性は免疫担当細胞やTLR作動薬によって異なることを明らかにした(Nohmi K, Tokuhara D. J Pediatr 2015)。具体的には、臍帯血および成人血から分離した単球(Mo)、樹状細胞(DC)、単球由来樹状細胞(MoDC)をLPS (TLR4リガンド), Pam3CSK4 (TLR1/2リガンド), flagellin (TLR5リガンド), zymosan (TLR2リガンド), poly(I:C) (TLR3リガンド), imiquimod (TLR7リガンド), ならびに CpG (TLR9リガンド)を用いて刺激し、各種細胞から産生される炎症性サイトカインの濃度を測定した。LPS、Pam3CSK4、Flagellin刺激では、炎症性サイトカイン産生はMoにおいて成人血で高く、DCでは成人血と臍帯血間に差はなく、MoDCでは臍帯血が成人血よりも高い傾向にあった。poly(I:C)、imiquimod、CpGは成人血・臍帯血のどの種類の細胞においても炎症性サイトカインの産生は低値であった。一方、TLR2の作動薬であるZymosan(出芽酵母や真菌壁の多糖成分)は、成人血および臍帯血の各免疫担当細胞において炎症性細胞産生を誘導するとともに、臍帯血の各細胞における炎症性サイトカインの産生量が成人と同等であることを見いだした(Nohmi K, Tokuhara D. J Pediatr 2015)。これらの結果はZymosanが成人と同様の自然免疫応答を新生児に惹起しうることを示しており、Zymosanが新生児の効果的なワクチンアジュバントになりうることを示唆すると考えられる。以上の結果は国内外の学会で発表し、Journal of Pediatricsに受理された。
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