臍帯血および成人末梢血から分離した単球にRSウイルス抗原を加え刺激することによるサイトカイン産生ならびに表面分子の差異について検討を重ねた。その結果、臍帯血由来単球では、成人血とは異なりMHC-class I分子の発現が弱く、IL-6およびTNF-alphaの産生が低いことがわかった。また、本研究の過程で、糖尿合併妊娠ではTLR5とTLR1/2を介した自然免疫応答が過剰に誘導されることを見出し、妊娠中の母体の合併症が新生児のワクチンへの反応性にも影響を与える可能性が示唆された。一方、RSウイルス抗原に対する効果的な免疫応答を新生児に誘導するためには、上記の研究成果から効果的なアジュバントが必要であることも明らかとなった。アジュバント検索のため、臍帯血および成人末梢血の単球、樹状細胞(DC)、ならびに単球から分化させたDC(MoDC)にLPS 、Pam3CSK4 、Flagellin 、Zymosan (TLR2リガンド)、Poly(I:C)を添加し、培養上清中のサイトカイン濃度を測定した。その結果、LPS,Pam3CSK4,flagellin,Poly(I:C)で刺激した場合、単球は成人よりも臍帯血群で低い炎症性サイトカイン産生を示したが、DCでは両群に差はなく、MoDCは臍帯血群が成人よりも高い炎症性サイトカイン産生を示した。一方、Zymosanで刺激した場合、単球・DC・MoDCにおける炎症性サイトカイン産生は成人と臍帯血の両群において差を認めなかった。 このことから、Zymosanは成人と同等の自然免疫応答を臍帯血の免疫担当細胞に惹起でき、RSウイルスに対するワクチンのアジュバントとして有用であることが考えられた。以上の結果から、RSV抗原にzymosanを添加したワクチンを用いて、幼若動物への免疫実験を行う準備を進めている。
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