これまで汎用されてきた全身性強皮症の動物モデルとしては、ブレオマイシン誘導性皮膚硬化モデルやtight-skinマウスがある。しかしながら、これらの全身性強皮症の動物モデルは、本症の病態を適切に反映しているとはいえず、新しい動物モデルの開発が望まれている。我々が作成するKLF5、Fli1ダブルヘテロ欠損マウスでは、全身性強皮症患者皮膚検体で実際にepigenetic制御により発現が低下しているKLF5、Fli1を遺伝的にヘテロ欠損させたという点で、本症の表現型を適切に反映している。本研究の目的は、KLF5ヘテロ欠損マウスとFli1ヘテロ欠損マウスを交配させることによってKLF5、Fli1ダブルヘテロ欠損マウスを作成し、全身性強皮症類似の病態 (線維化、血管障害、免疫異常) を発症するかどうか検討することである。昨年度はKLF5、Fli1ダブルヘテロ欠損マウスはヒト全身性強皮症と類似する皮膚硬化および血管異常を呈することを明らかにした。本年度は免疫学的異常について解析した。KLF5、Fli1ダブルヘテロ欠損マウス由来B細胞ではCD19発現量がヒトの全身性強皮症と同様に亢進していた。Fli1、KLF5ともにCD19のプロモーター領域に結合することも確認された。KLF5、Fli1ダブルヘテロ欠損マウス由来B細胞では、LPSや抗CD40抗体刺激により線維化促進作用を有するIL-6産生亢進が認められた。また、KLF5、Fli1ダブルヘテロ欠損マウスでは、抗核抗体の産生が野生型マウスに比較して高力価でみられた。以上より、KLF5、Fli1ダブルヘテロ欠損マウスは、免疫学的異常の観点からも、全身性強皮症の異常を反していると考えられた。
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