アトピー性皮膚炎(AD)は表皮角層バリアの障害により、外来抗原の角層透過性が亢進し、さらに抗原との接触や掻破が角化細胞、樹状細胞、T細胞の免疫系を促進することによって発症する。表皮バリア機構はフィラグリン(FLG)を始めとする構造蛋白質によって構築され、それを分解するプロテアーゼとそのインヒビターが調節する。従来、バリア機能を測定する方法として経表皮水分蒸散量、角質水分量などが行われてきた。しかしバリア機能を角層蛋白質の種類と量の変化で把握できれば、バリア障害の直接的原因に迫ることが可能である。しかしバリア状態は、併存する炎症、発汗、抗菌ペプチド作働などと深く関わっており、それらを同時に把握する必要がある。本研究では、AD患者の角層を非侵襲性のテープストリッピング採取することにより得て、角層抽出蛋白質をQ-extractable orbitrap LC/MS/MSにて解析し、様々なバイオマーカーと成りうる分子を同定した440蛋白質から見出すことができた。それらは、角層バリア機能に関わる蛋白質、角層バリア機能に関わるプロテアーゼ、抗菌ペプチド、汗関連蛋白質、炎症関連血漿蛋白質に分けることができた。これらの蛋白質の中には、健常人角層での量と有意に異なるもの、外因性と内因性ADによって異なるものなどがあった。さらに汗関連物質の中でGCDFP15の角層抽出蛋白質での定量を行い、AD角層では減少していることを明らかにした。このGCDFP15の減少は、エクリン腺分泌部での減少と関連していることを免疫組織学的染色で明らかにした。
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