研究課題/領域番号 |
26670525
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
加藤 昌志 名古屋大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (10281073)
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研究分担者 |
武田 湖州恵 中部大学, 生命健康科学部, 准教授 (80345884)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | メラノーマ / RET-マウス / DTX3L / 免疫療法 / 分子標的療法 / LSF / p21 |
研究実績の概要 |
【背景・目的】近年、BRAF変異を持つ転移性メラノーマに対する分子標的療法の効果がヒトで証明され、再発はあるものの、メラノーマ治療の分子標的療法に大きな期待が寄せられている。一方、日本人においてBRAF変異のあるメラノーマは25%にすぎないので、BRAF変異の無いメラノーマの浸潤・転移を制御することが、大変重要である。本研究では、まず、代表者らが樹立した良性腫瘍からBRAF変異の無いメラノーマを自然発症するモデル動物(RET-マウス)を用い、良性腫瘍がメラノーマに悪性転化する際に発現が変化する分子を網羅的に調べる。次に、メラノーマの発症・進展を制御する新しい分子を利用した新規バイオマーカーや分子標的療法を動物レベルで開発する。最後に、本研究で標的とする分子の発現および機能をヒトメラノーマ細胞や組織でも確認し、バオーマーカーや分子標的療法を臨床応用するための基礎データを固める。 【研究成果】 1. Deltex-3-like(DTX3L)分子の発現レベルが、ヒトやRET-マウスに発症したメラノーマにおいて、母斑や良性メラノサイト系腫瘍より高いこと発見し、DTX3L分子の発現レベルが、メラノーマのバイオマーカーの候補になりえる可能性を提案した。 2. Deltex-3-like(DTX3L)分子は、FAK/PI3K/AKT系シグナル伝達を介してメラノーマの転移を制御している可能性を提案した。 3. Late SV40 factor 3(LSF)がマウスおよびメラノーマにて発現が低下していることを示した。さらに、LSFがp21のプロモーターとして機能し、メラノーマ増殖に関与している可能性を示した。 4. 国際共同研究により、リンパ節切除が、メラノーマの進展に与える影響を免疫学的に検討した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
昨年までのEspin・Plxnc1・Gng2に加えて、DTX3L・LSF分子が、メラノーマの新規バイオマーカーの候補となりうる可能性を提案できた。さらに、DTX3L・LSF分子がメラノーマの増殖または転移を予防・治療できる分子標的療法の候補になりうる可能性を世界で初めて報告した。また、最近、注目されているメラノーマ免疫療法に加えて、プラズマ照射を用いた新規メラノーマ治療法を提案した。以上より、本研究は、当初の計画以上に進展していると判断できる。
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今後の研究の推進方策 |
現在、新規に数種類の新規メラノーマ制御分子の分子機能進め、代表者オリジナルのメラノーマ自然発症マウス(RET-マウス)を用いた新規分子標的療法の開発を進める。さらに、最近、メラノーマ治療の主役になりつつある免疫療法にも着目し、RET-マウスを用いた国際共同研究をさらに積極的に推進する。また、医工連携研究により、メラノーマに対する新療法の開発を進める。最後に、複数の治療法を組み合わせることにより、より効果的なメラノーマ予防・治療法の開発をめざす。
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次年度使用額が生じた理由 |
メラノーマの予防・治療だけでなくバイオマーカーとして有効である可能性のある新規分子を発見した。本結果の真偽を見極める追加実験等を実施するための物品購入や人件費が、次年度にずれ込んだため、未使用額が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
新規分子を対象としてメラノーマのバイオマーカーとしての有効性、予防治療効果について、再現性を検討する。再現性を確認できた場合には、分子メカニズムを解明する。これらの研究を推進するためには、試薬・用品・ガス類等の「物品費」、学会参加費や研究打合せ等の「旅費」、研究補助員・研究員等の雇用および英文校正のための「人件費・謝金」、マウスの飼育管理等の「その他」の経費を使用する。
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