研究課題
平成26年度に、私たちは主に以下の3つの研究成果をあげた。1)初代培養ケラチノサイトは、通常培養条件下では単層の上皮シートを形成する。このような状態のケラチノサイトはANKRD35タンパク質をほとんど産生していない。しかし、初代培養ケラチノサイトをある特殊な条件下で重層化させると、ANKRD35タンパク質の産生が誘導されるようになり表皮と同様に細胞・細胞間接着部位に局在することを見出した。今後、この実験系を利用して、ANKRD35の表皮における機能をin vitroで調べる事を計画している。2)エピソーマルベクターを用いて、ANKRD35を安定的に発現するHaCaT細胞株の作製に成功した。本来、ANKRD35タンパク質をまったく産生しないHaCaT細胞においても、ANKRD35はHaCaT細胞の細胞・細胞間接着部位に局在した。ANKRD35安定発現細胞は親株に比べて、より扁平な形態を示した。このことは、機序は不明ながら、ANKRD35の発現が表皮細胞の動態に影響を及ぼし得る事を示している。3)ANKRD35のN末端部分のみから成る変異体、およびC末端部分のみから成る変異体をそれぞれHaCaT細胞に一過性発現した。その結果、C末端部分は細胞質ゾルに拡散したが、N末端部分は、細胞・細胞間接着部位に局在した。さらに、ANKRD35の全長配列のN末端またはC末端のいずれかにmycタグ配列を付加したリコンビナントタンパク質を発現した所、N末端にタグをつけたタンパク質は細胞質ゾルに拡散し、細胞・細胞間接着部位に局在できなくなっていた。このことから、ANKRD35の細胞内局在は主にN末端側のアミノ酸配列に依存していることが明らかとなった。
2: おおむね順調に進展している
今後、ANKRD35の機能を明らかにしていく上で、欠くことのできない基礎的な知見と実験材料が平成26年度の研究成果により得られたため。
1)ANKRD35は細胞・細胞間接着部位だけでなく、細胞膜にも局在している。このことからANKRD35のN末端部分は、アドヘレンスジャンクションとの相互作用ドメインだけでなく、細胞膜との相互作用にも重要な配列を含んでいるものと考えられる。アドヘレンスジャンクションおよび細胞膜への局在メカニズムを明らかにするため、安定発現株を用いた免疫沈降実験および、N末端部分を含むGST融合タンパク質によるpulldown実験により相互作用分子の探索/同定をおこなう。2)ANKRD35の表皮における機能を明らかにするため、重層化した初代培養ケラチノサイトのANKRD35をノックダウンし、その表現型を解析する。3)HaCaT細胞だけでなくDLD-1細胞でもANKRD35の安定発現株を作製する。これらの細胞株を用いて、ANKRD35が細胞の形態や接着性、移動能に、どのような影響を与えるのかを解析し、ANKRD35の表皮細胞接着における機能の解明につなげる。
血清、プラスチック培養器、トランスフェクション用試薬などの消耗品について、予想よりも消費量がやや少なかったため。
主に消耗品の購入に使用する。
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すべて 雑誌論文 (6件) (うち査読あり 6件、 謝辞記載あり 2件) 学会発表 (3件) 備考 (1件)
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