扁桃体基底外側核部分をトリミングして摘出した後、人工脳脊髄液(aCSF)中にてインキュベート(ex vivo)、または生体マウス扁桃体に透析膜プローブを留置した脳内微小潅流法(in vivo)によって、sCSF中に放出されるセロトニン濃度の変化を電気化学検出器付き高速液体クロマトグラフィー(HPLC-ECD)にて定量解析した。aCSFを介してカンナビノイドCB1受容体作動薬を扁桃体に潅流すると、セロトニン濃度が減弱した。高カリウム溶液刺激によってセロトニンは顕著に増大するがカルシウムイオン除外aCSF中では変化しないことから、測定したセロトニンは神経細胞由来であることが示唆された。 一方、扁桃体基底外側核においてセロトニンタイプ2受容体(5-HT2R)が関与する神経伝達物質放出機構をグルタミン酸またはガンマアミノ酪酸(GABA)によるシナプス後電流(それぞれEPSCおよびIPSC)を電気生理学的に解析した。その結果、5-HT2R作動薬によって微小EPSCの頻度が増大し、微小IPSCの頻度が減少する効果が確認された。また記録する錐体細胞には内向き電流が確認された。 以上のことから、扁桃体基底外側核では内因性カンナビノイドがセロトニンの遊離を抑制的に制御するとともに、セロトニンはシナプス後部の5-HT2Rの活性化による内因性カンナビノイド逆行性シグナル伝達を介してシナプス前終末からのGABA放出を抑制的に制御している可能性が示唆される。しかしながら、グルタミン酸放出が増大するメカニズムは現時点では不明であり、次年度にさらに詳細な解析を行う予定である。
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