扁桃体基底核においてセロトニンタイプ2(5HT2)受容体が関与する神経伝達物質放出機構をグルタミン酸またはガンマアミノ酪酸(GABA)によるシナプス後電流(それぞれEPSCおよびIPSC)を電気生理学的に解析し、5HT2受容体サブタイプについて検討した。その結果、5HT2受容体作動薬によって生じるPaired Pulse比の増大を伴うIPSC振幅の減弱が5HT2A受容体拮抗薬によって回復した。 離乳期の生後3週齢で恐怖条件付けを行ったマウスを成獣後の生後10週齢時に手がかり刺激に暴露したところ恐怖様行動が見られた。これにより、生後3週齢時に学習した恐怖記憶を生後10週齢で想起可能であることを確認した。また、幼若期ストレスモデルマウスが生後10週齢時に行った高架式十字迷路試験にて、対照群と比べて不安様行動が減少することを確認した。電気生理学的検討では扁桃体基底核錐体細胞に対して電流固定法にて電流注入による膜電位特性解析したところ、幼若期ストレスモデルマウスでは対照群と比較し活動電位の発火頻度が高くなるという結果を得た。静止膜電位、発火閾値、後過分極振幅に群間差は認めなかった。薬理学的検討としてパッチクランプ記録中の扁桃体スライスにセロトニンを灌流投与したところ対照群の扁桃体基底核錐体細胞の発火頻度が上昇したが、幼若期ストレスモデルマウスではセロトニン投与前後で発火頻度に変化は認めなかった。このことから、幼若期ストレスモデルマウスの扁桃体基底核の錐体細胞ではセロトニンの感受性が低下していると考えられた。 慢性ストレスを負荷されたラットの腹側被蓋野に局在するドーパミン作働性ニューロンからスライスパッチクランプ記録を行い、膜電位変化を解析した。静止膜電位や活動電位の発火頻度・閾値などのパラメーターを対照群と比較したが有意な差は認められなかった。
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