研究課題/領域番号 |
26670540
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研究機関 | 浜松医科大学 |
研究代表者 |
武井 教使 浜松医科大学, 子どものこころの発達研究センター, 教授 (80206937)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 学校安全調査 / いじめ実態把握尺度 / school climate尺度 / いじめ被害頻度 / 児童生徒被害頻度と保護者把握のかい離 |
研究実績の概要 |
まずいじめ行動を含んだ児童生徒の情動に関わる基礎的な知見の評価として「学校安全調査」尺度を作成した。「学校安全調査」の内容は、いじめ実態、個人背景、家庭背景、学校背景の把握である。 本質問紙の妥当性と信頼性を確保することを目的に統計的検討を行った。探索的因子分析、確認的因子分析により妥当性の検討、他のグローバルスタンダードとなっている質問紙との比較により妥当性の検討、更には、再テスト法による信頼性の検討を行った。その結果、本質問紙がいじめという事象を捉えているということ、すなわち妥当性があることが明らかになった。信頼性については、現在、解析中である。 更に本質問紙「学校安全調査」をサンプル数3000人(小学校26校、中学校3校)に実施した。これは、いじめの実態および、いじめの発生に関連する危険因子を個人レベル、集団レベルで測定し、更に、その関連をmulti-level random effects modelを用いた解析を用いて明らかにするためである。これらにより、いじめ頻度に影響を及ぼす個人レベルや家庭レベル、学校・学級レベルでの要因(学校風土school climateやや教師の特性等)を明らかにすることが期待できる。現在、小学校4年生のうち57%が何らかのいじめ被害を受けていること、いじめの種類に男女差があること、子どもの被害は、保護者の把握より多く、その差は5倍にも及ぶことが明らかになった。 今後、さらに解析を進め、その結果をもとに、生徒指導全般やインクルーシブ教育実施のための具体的な提言を行っていく予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
まずいじめ行動を含んだ児童生徒の情動に関わる基礎的な知見の評価として「学校安全調査」尺度を作成した。いじめの被害の実態やいじめ被害後の対応行動を把握する質問項目の他、個人背景、家庭背景、学校背景を把握する質問項目からなり、児童生徒本人、その保護者、その学校の教職員の三者に同時調査することができるものとなっている。いじめ被害調査については、グローバルスタンダードであるOlweus bullying questionnaireを参考にして作成した。学校背景については、教職員の経験年数などの個人背景の他に、学校風土(school climate)の概念を取り入れ、児童生徒・保護者・教職員三者に同時に調査することで、学校や学級の雰囲気を多面的に捉えられるようにした。 本質問紙の妥当性と信頼性を確保することを目的に、統計的検討として、探索的因子分析、確認的因子分析により妥当性の検討、グローバルスタンダードの質問紙OBQとの比較により妥当性の検討、更には、再テスト法による信頼性の検討を行った。現在解析途中であるが、妥当性について本質問紙はいじめという事象を捉えることができているとう結果となっている。学校風土の因子分析について検討を進めていく。 更に本質問紙「学校安全調査」をサンプル数3000人(小学校26校、中学校3校)で実施した。いじめの実態把握として、小学校4年生については、57%に何らかのいじめ被害経験があること、いじめの種類ごとに男女差があることが分かった。また児童生徒のいじめ被害は、保護者の把握より多く、その差は5倍に及ぶということが明らかになった。
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今後の研究の推進方策 |
現在行っている質問紙の信頼性と妥当性の検討を更に進める。school climateについての尺度は、今後も更にサンプルの収集の上検討を行い、必要となれば質問紙の部分的な改定を行う。 また、既に収集したデータをもとに、いじめの発生に関連する危険因子を、個人レベル、集団レベルについて、multi-level random effects modelを用いた解析等を用いて明らかにしていく。児童生徒の個人背景、家庭背景といじめ被害との関連だけでなく、所属する学校・学級の教職員の背景や学校風土・学級風土といじめ発生との関連について検討していく。 サンプル収集に際し地方自治体の協力が得らなかったため、研究計画のサンプルサイズに比べて現段階でのサンプルサイズが小さく約3000名となっている。今後更に研究参加を働きかけ、サンプルサイズを大きくすることでより誤差の少ない検定をしていく。 またsubsampleに対し、28年度以降にいじめ介入プログラムmanualized group CBTを行いその効果検証をしていく。
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次年度使用額が生じた理由 |
調査に際し、協力を得られると想定していた自治体が、自治体全体としての協力をすることはできないとの判断になったため、学校現場に対して、個別の依頼をする必要が出た。そのことから計画に遅延とサンプル数を減らすことが余儀なくされた。 そのため研究経費の割り振りを調整し、一部を繰り越すことにした。
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次年度使用額の使用計画 |
引き続き、データ収集(交通費を含む)、調査紙印刷、データの打ち込みや解析に掛かる経費として使用する。
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