いじめ行動を含んだ児童生徒の情動に関わる基礎的な知見の評価として「学校安全調査」尺度を作成し、その妥当性と信頼性を確保することを目的に統計的検討を行った。26年度からの妥当性の研究に加え、27年度の研究では、DIF(Differential Item Functioning )の検討、再テスト法による信頼性の検討を行った。その結果、「学校安全調査」のいじめ被害頻度尺度は、信頼性、妥当性があることが明らかになった。一方で学校風土尺度は部分的な改定の必要性が明らかとなった。今後の研究において、学校風土尺度の改定を行っていく。 また、本質問紙「学校安全調査」を26年度の3000人(20校)に加え、27年度には2500人(小学校6校、中学校3校)で実施した。児童生徒、学校職員は100%に近い回答率、保護者からも80%を超える回答率を得た。その結果、小学校では41%、中学生では29%に何らかのいじめ被害経験があること、いじめの種類ごとに男女差があること、また児童生徒のいじめ被害は、保護者の把握の5倍に及ぶことなどが明らかになった。 更にいじめの発生に関連する危険因子を、個人レベル、集団レベルについて、multi-level random effects model を用いて解析を行った。現段階では、個人レベルとして「性別」「いじめ加害経験」「外国語の使用」、集団レベルとして「学校風土」の関連が明らかになった。今後更に詳細な検討を進め、教師の性別、経験年数、指導態度などの学校要因を加えた関連の検討を行う。 いじめ介入プログラムSMILEは、28年度に行う。上記の学校を対象に、cluster(学校)単位でランダム化し、介入群と非介入群に2分割の上介入群にプログラムを実施する。1年後までをfollow-upし、介入効果及び長期遷延効果の検証を行う。
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