研究課題/領域番号 |
26670541
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
橋本 亮太 大阪大学, 連合小児発達学研究科, 准教授 (10370983)
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研究分担者 |
安田 由華 大阪大学, 医学部附属病院, 特任助教 (20448062)
山森 英長 大阪大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (90570250)
藤本 美智子 大阪大学, 医学部附属病院, その他 (50647625)
梅田 知美 大阪大学, 医学(系)研究科(研究院), 研究員 (00625329) [辞退]
藤野 陽生 大阪大学, その他の研究科, 助教 (20707343)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 統合失調症 / 大脳皮質体積 / ポリジェニックリスクスコア / 中間表現型 / 遺伝子多型 / MRI / SNP / 遺伝子 |
研究実績の概要 |
これまでの統合失調症の遺伝学的研究では、疾患と関連する一つ一つのSNPを見出すことに焦点を当て、擬陽性のリスクを抑えるために厳しい統計学的閾値(P<5.0×10-8)を設けて検定してきた。しかし、見出されたSNPの疾患に与える影響はオッズ比1.10-1.20と非常に弱く、一つ一つのSNPの効果が、統合失調症の高い遺伝率を説明することはできない。そこで、GWASアレイ上で検定している何十万個のSNPのいくつかは、厳しい閾値設定による偽陰性であり、統計学的閾値をP<0.1, P<0.2, P<0.3, P<0.4, P<0.5のように緩和することで、より多くのリスクSNPを同定し、まとめて1つのスコア(Polygenic score)とすることで、統合失調症の高い遺伝率を説明できるのではないかと考えられている。これは、疾患が多因子遺伝の形式を示すことからも、妥当で斬新なアイディアである。本研究では、このポリジェニックスコアと統合失調症の神経生物学的な障害である中間表現型との関連を検討し、統合失調症の病態機序の解明に貢献したいと考えている。 本年度、我々はいくつかの中間表現型の中で、脳構造を中間表現型として用いて、ポリジェニックリスクスコアとの関連を検討した。 大脳皮質体積は60-90%の遺伝性があることが知られており、160名の統合失調症患者と378名の健常者の脳MRIデータを用いて、大脳皮質体積とポリジェニックリスクスコアとの関連をSPM8を用いて検討した。統合失調症患者においては、ポリジェニックリスクスコアと左の上側頭回皮質体積との負の相関が認められたが、健常者については、そのような相関が認められなかった。上側頭回皮質は、統合失調症において体積の減少が知られている部位であり、それは遺伝的なリスクと関連することが示された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の目的は、ポリジェニックリスクスコアを用いて、精神疾患の中間表現型との関連を検討し、統合失調症をはじめとする精神神経疾患の生物学的なメカニズムを明らかにすることである。本年度については、我々はいくつかの中間表現型の中で、脳構造を中間表現型として用いて、ポリジェニックリスクスコアとの関連を検討した。 大脳皮質体積は60-90%の遺伝性があることが知られており、160名の統合失調症患者と378名の健常者の脳MRIデータを用いて、大脳皮質体積とポリジェニックリスクスコアとの関連をSPM8を用いて検討した。統合失調症患者においては、ポリジェニックリスクスコアと左の上側頭回皮質体積との負の相関が認められたが、健常者については、そのような相関が認められなかった。上側頭回皮質は、統合失調症において体積の減少が知られている部位であり、それは遺伝的なリスクと関連することが示された。論文としてまとまるまでの検討が出来たため、研究はここまで計画通り遂行できている。
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今後の研究の推進方策 |
本研究の目的は、ポリジェニックリスクスコアを用いて、精神疾患の中間表現型との関連を検討し、統合失調症をはじめとする精神神経疾患の生物学的なメカニズムを明らかにすることである。本年度については、我々はいくつかの中間表現型の中で、脳構造を中間表現型として用いて、ポリジェニックリスクスコアとの関連を検討した。160名の統合失調症患者と378名の健常者の脳MRIデータを用いて、大脳皮質体積とポリジェニックリスクスコアとの関連をSPM8を用いて検討した結果、統合失調症患者においては、ポリジェニックリスクスコアと左の上側頭回皮質体積との負の相関が認められたが、健常者については、そのような相関が認められなかった。上側頭回皮質は、統合失調症において体積の減少が知られている部位であり、それは遺伝的なリスクと関連することが示された。 今後は、大脳皮質体積以外の中間表現型について、同様にポリジェニックリスクスコアとの関連を検討し、統合失調症の病態解明に貢献したい。
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次年度使用額が生じた理由 |
実験を行うテクニシャンを募集したが適任者がみつからず人件費として使用する予定であった金 額が未使用となった。またそれに伴い実験量が減少したことにより購入予定であった実験消耗品 の購入を見送ったため。
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次年度使用額の使用計画 |
適任者が見つかり次第採用する予定であり、未使用額は人件費に充当する予定である。またそれに伴い実験活動を拡大させていく予定であるため必要な量の消耗品の購入を予定している。
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