研究実績の概要 |
これまでに我々は、終末糖化産物(AGEs、 Advanced glycation end products)のひとつであるペントシジンが蓄積するカルボニルストレスが統合失調症症例の2割にあること発見し報告した(Arai et al., Arch Gen Psychiatry 2010)。しかし、カルボニル化合物およびそのカルボニルストレスが脳神経系細胞においてどのように影響を及ぼすのかその分子機構はまだ明らかになっていない。本研究では、神経系細胞株、統合失調症患者由来人工多能性幹細胞(iPS細胞)から分化誘導した神経細胞、グリア細胞を用い、神経-グリア間の代謝系の異常が引き起こす障害のメカニズムに焦点を当て、統合失調症患者由来細胞はカルボニルストレス代謝関連の脆弱性を持っているという仮説の検証を行い、カルボニルストレスが神経細胞、アストロサイトに与える影響について検討した。 基礎的検討として、神経系細胞株(neuroblastoma)、グリア細胞系細胞株(astrocytoma)を用いた解析により、脳内での神経細胞やアストロサイトなど細胞種によりカルボニルストレスへの脆弱性が異なる可能性、カルボニルストレスがastrocyte-neuron 相互のグルコース、乳酸、dicarbonyls、AGEs代謝といった各種代謝バランスに影響を及ぼすことが示唆された。 今後は患者由来神経系細胞等を用いて詳細な解析を行い、統合失調症病態とカルボニルストレス代謝異常のメカニズムを解明する。
|