研究課題
二次発がんを導く重篤な突然変異として染色体転座がある。転座はDNA二本鎖切断後に導かれるが、転座発生までのステップは複雑であり様々なDNA修復因子が関わるため、患者の遺伝的背景からその予測をすることは極めて困難である。一方、現在主流の放射線誘発染色体転座を検出する方法は、熟練した技術が必要であり測定完了まで数日を要する。本研究ではPCRを用いた新染色体転座検出系を開発することで、細胞内における放射線誘発染色体転座頻度を簡便かつ短時間に予測する方法の確立を目指す。本研究では転座発生原因となる放射線照射誘発DNA二本鎖切断(DSB)を模倣且つ制御するために、15bpと長い認識配列を有するゲノム内在性制限酵素I-PpoIを用いる。本年度は全細胞集団においてI-PpoIを同時期に誘導するため、細胞はタモキシフェン誘導体4-0HT(4-hydroxytamoxifen)で誘導可能なI-PpoI-HT1080細胞を樹立した。4-OHT誘導DSB量を調整するため、4-OHTの濃度及び処理時間の条件検討を行った。4-OHTの濃度は、転座が発生するまでの期間である72時間以内に細胞死が起こらないことを基準として設定を行った。条件検討を行う際に、DSB量の評価は蛍光免疫染色によるgH2AX fociを用いて行った。その結果、300nM 4-OHTの4時間転嫁が細胞に適度のDSBを誘導できることが確認出来た。
3: やや遅れている
本研究の基盤となるI-PpoI-HT1080細胞が樹立することができ、DSB誘導条件が決定したことから、研究計画に沿って順調に進展していると考えている。またDSB切断は、DSBマーカーであるgH2AX、DNA切断部位におけるPCRにより確認することが出来た。しかし転座を検出するためのプライマーセットではPCRによる増幅が認められなかった。すなわち、本研究で標的にしていた染色体間での転座の検出は現在のプライマーセットでは検出できないことが明らかになった。
適正な4-OHT濃度及び処理時間を用いて、今後は異なるプライマーセットを用いて転座部位でのPCRを試みる。また数時間のみの一過性I-PpoI発現を可能にするため、精製I-PpoI酵素を細胞内に導入するPCR転座検出法の確立も併せて進めていく。
前年度の後半に計画していたリアルタイムPCR解析へ向けた条件検討が遅れたため、解析に必要な試薬を購入しなかった。
リアルタイムPCR解析に必要な試薬を購入する。
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すべて 雑誌論文 (6件) (うち国際共著 2件、 査読あり 5件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (7件) (うち国際学会 2件、 招待講演 4件) 備考 (3件)
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