研究課題
二次発がんを導く重篤な突然変異として染色体転座がある。転座はDNA二本鎖切断後に導かれるが、転座発生までのステップは複雑であり様々なDNA修復因子が関わるため、患者の遺伝的背景からその予測をすることは極めて困難である。一方、現在主流の放射線誘発染色体転座を検出する方法は、熟練した技術が必要であり測定完了まで数日を要する。本研究ではPCRを用いた新染色体転座検出系を開発することで、細胞内における放射線誘発染色体転座頻度を簡便かつ短時間に予測する方法の確立を目指す。本研究では転座発生原因となる放射線照射誘発DNA二本鎖切断(DSB)を模倣且つ制御するために、15bpと長い認識配列を有するゲノム内在性制限酵素I-PpoIを用いる。本年度は全細胞集団においてI-PpoIを同時期に誘発するため、細胞はタモキシフェン誘導体4-OHT(4-hydroxytamoxifen)で誘導可能なI-PpoI-U2OS細胞の作成および樹立を試みた。しかしながらER-I-Ppo1を発現するU2OS細胞でのDSBの切断が認められなかった。そのため、昨年度まで使用したI-PpoI-HT1080細胞を使い、1000 nM 4-OHT処理後のrDNA部位での転座頻度をPCRにより測定したが、4種類の転座の組み合わせの全てで転座の発生はほとんど確認出来なかった。他染色体実験による放射線照射後の転座頻度を上昇させるATM阻害剤およびDNA-PK阻害剤の処理も試みたが、I-Ppo1によって誘発されるrDNA部位での転座はほとんど観察されなかった。qPCRにより切断効率を確認した結果、約30-50%のみが切断されていたため、今後の課題として切断効率を上げる方法の確立が必要であると考えられた。
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