研究実績の概要 |
TAK1(tansforming growth factor-beta-activated kinase 1)は抗アポトーシスに働き、KRAS変異細胞の生存調節に働くキナーゼである。本研究ではヒトKRAS変異肺がんに対する有効な治療方法を見つけるために、同変異肺がんA549細胞を用いて、温熱(44度, 20分)とTAK1阻害剤5Z-7-oxozeaenolの併用効果を検討した。また、細胞死の機序について、PI/アネキシンV-FITCによるアポトーシス解析およびコロニー形成によって調べた。さらにミトコンドリア膜電位変化、細胞内ROSの産生、アポトーシス関連のタンパク質発現、および細胞内のカルシウムイオン濃度を検討した。TAK1阻害剤と温熱併用はミトコンドリア膜電位の低下、ROSの産生を促進し、さらに、アポトーシス関連するカスパーゼ3、カスパーゼ8の活性化を促進した。加えて、温熱によるBcl-2、p-p38、p-JNKおよびLC3の発現を低下させた。また、両者の併用はカルシウムイオン濃度およびChop発現を増やした。これらの結果は、ERストレスを介したアポトーシスが関係することを示唆する。同様の結果をヒト白血病細胞株(Molt-4)を用いた場合でも得ており、より詳細な機構解明を目指している。
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