研究課題/領域番号 |
26670554
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研究機関 | 滋賀医科大学 |
研究代表者 |
森川 茂廣 滋賀医科大学, 医学部, 教授 (60220042)
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研究分担者 |
柳沢 大治郎 滋賀医科大学, 分子神経科学研究センター, 助教 (50581112)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | アルツハイマーモデル / 脳代謝画像 / グルコース代謝 / 13C-MR |
研究実績の概要 |
従来の実験ではマウス脳内に検出される13Cグルコース代謝産物の分布をみることが目的であったが、今回の研究課題を達成するためには、アルツハイマーモデルマウスとワイルドタイプ(正常)マウスとの間の生成代謝産物の違い、生成時間経過の違い、分布の違いなどについて高い時間分解能で、比較検討する必要があり、そのためにさらなる検出感度向上と検出の安定性、信頼性の向上を実現する必要がある。信号検出のためのRFコイルについては、これまでは、特注の送信用1H容積コイル(高いB1均一性を実現)と受信用1H表面コイル(高い静磁場均一性を実現)に自作の送信用13Cコイルを組み合わせて、多量子遷移MR法による高感度の1H検出13C MRスペクトロスコピック画像法を行ってきた。しかし、自作の送信用13Cコイルでは原理的にもB1均一性に限界があり、ケーブルの取り回しで感度が変わることも問題であった。そこで今年度、第一にコイルの改良を行うこととした。13Cコイルは送信のみであるため、現在の送信用1H容積コイルの筐体に、同じく容積コイルをして組み込みを行った。また、7T MR装置に関しては別予算で平成26年3月に信号検出系のアップグレードが完了し、更なる検出精度の向上が期待された。一方、パルスプログラムにおいては、眼窩部分の脂肪の信号混入を抑制する領域抑制パルスを追加するとともに安定した1Hの180度パルスを出せるようコンポジットパルスを利用するなどの改良を行った。またMatlabを用いるデータ処理プログラムも信号部分を有効に抽出できるよう改良した。こうしたソフト・ハードの改良によりワイルドタイプマウスを用いて測定条件設定を行い、腹腔内に投与した13Cグルコースから生成される脳内のグルタミン酸・グルタミンンのマッピングを実現した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ハード面・ソフト面の双方からのアプローチにより、多量子遷移MR法による1H検出13C MRスペクトロスコピック画像法の高感度化を実現し、ワイルドタイプ(正常)マウスを用いて測定のための条件設定もおこなった。
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今後の研究の推進方策 |
これまでにワイルドタイプのマウスを用いて測定条件はほぼ確定したので今後はアルツハイマーモデルマウスを用いてワイルドタイプのマウスとの比較を行う。特に、13Cグルコースの脳への取り込み、生成される代謝物の違いとその生成速度、各々の代謝物の脳内分布に差がないかなどの視点に立って両者を比較する。もし両者の間に何らかの差が見られれば、それをより明瞭に示すことができるよう、撮像プロトコール、グルコース投与プロトコールなどの見直しを行う。また、実験後の動物の脳の顕微鏡標本を作製し、βアミロイドの沈着部位と代謝マップの対比を行う。ある程度の結果が出れば、より週齢の短い若いマウスでも実験を行い、どの時点からこうした代謝変化が現れるのかについても検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初は、既に他の予算で導入済の現有の1H容積コイルを温存して、このプロジェクト専用に新たに送信用の1H,13C二重同調容積コイルを購入する予定であったが、それには予算が不足するため、現有の1H容積コイルを改造して、その筐体に13Cのコイルエレメントを埋め込んだ。そのため当初計画より支出が抑えられた。この費用は物品費でなくその他の項目から支出されている。
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次年度使用額の使用計画 |
成果をあげて複数の国際学会での発表をしたいと計画しており、そのための予算に充当することを考えている。
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