研究課題
腫瘍血管の内皮細胞のVEGF (Vascular endothelial growth factor)やVEGF 受容体を標的とするBevacizumab 投与などの血管新生阻害処置が「腫瘍血管正常化」を誘導する事が知られている。この「腫瘍血管正常化」期間中に、固形腫瘍内Q 腫瘍細胞の感受性を選択的に検出する我々の手法を適応した解析では、腫瘍内の急性低酸素領域が効率的に解除された。さらには、腫瘍のシグナル伝達を阻害する事によって間接的にVEGFを標的とする、PI3K (Phosphatidylinositol-3-kinase)を介するtyrosine kinase receptor signaling の阻害効果を有するウォルトマンニンの投与や、やはり血管新生阻害作用を有するサリドマイド投与でも同じく「腫瘍血管正常化」が認められ、さらにはこの期間中に腫瘍内の急性低酸素領域が解除される事も我々の手法によってすでに明らかとなっている。今年度は、固形腫瘍内Q腫瘍細胞の感受性を加味した局所腫瘍制御に及ぼす腫瘍細胞のp53 statusの影響をさらに詳しく解析し、ガンマ線照射後に認められる回復現象がp53変異腫瘍細胞ではほとんど認めない事、Q腫瘍細胞で顕著に認められた回復現象が、高LET(Linear energy transfer)放射線照射や原子炉熱外中性子線ビーム照射によって、効率よく抑えられる事が明らかとなった。さらに、中性子捕捉療法に必須とされる硼素-10化合物からの10Bの分布効率も腫瘍細胞のp53 statusに影響されることが明らかとなった。今後は、低グルコース環境にあるとも考えられているQ腫瘍細胞の特性も利用し、フェンフォルミンやメトフォルミンのようなビグアナイド系抗糖尿病薬剤の投与を組み合わせ、各腫瘍細胞分画における感受性を選択的により詳細に解析したい。
4: 遅れている
独自に開発したQ 腫瘍細胞の亜分画の酸素化Q腫瘍細胞の感受性を選択的に検出する手法は順調に確立されつつある。しかし、中性子捕捉療法のさらなる展開も大きな目的の一つとしていたが、2011年3月の東日本大震災時の福島第1原発事故対応後に見直された新規制基準への研究用原子炉の対応状況を審査する手続きに長期間を要し、平成27年度には原子炉が運転されなかった。このため、原子炉中性子線ビームを用いた担腫瘍実験動物への照射実験の施行が不可能な状況が続き、本研究課題の遂行状況の遅れの大きな原因の一つとなっている。
上記の「現存までの達成度」に記載したように、平成27年度には原子炉は運転されなかったために、平成28年度まで研究期間を延長する手続きをすでに済ませている。さらには、ガンマ線照射などの一般的な放射線照射、抗癌剤投与などの腫瘍細胞のDNAを損傷する処置時における酸素化休止期腫瘍細胞の感受性増強を主な目的に変更することもあり得ると考えている。平成27年度までに明らかにし得た「血管正常化」を示すサリドマイドの併用投与、殺幹細胞特性が報告されたビグアナイド系抗糖尿病薬のメトフォルミンや低グルコース環境下で殺腫瘍細胞効果増強作用を有する同じくビグアナイド系抗糖尿病薬のフェンフォルミンの併用投与による固形腫瘍内の酸素化休止期腫瘍細胞の感受性の変化を詳細に解析したい。特に、メトフォルミンは、経口抗糖尿病薬として現在頻繁に臨床使用されており、有用性が明らかになれば、臨床現場での適応の可能性もかなり大きいと考えられる。DNA損傷処置後の回復能が大きな酸素化休止期腫瘍細胞分画の感受性を選択的に検出するために要する試薬、抗体などの関係薬品の購入に研究経費の多くをあてざるを得ないと考えている。
独自に開発したQ 腫瘍細胞の亜分画の酸素化Q腫瘍細胞の感受性を選択的に検出する手法は順調に確立されつつある。しかし、中性子捕捉療法のさらなる展開も大きな目的の一つとしていたが、2011年3月の東日本大震災時の福島第1原発事故対応後に見直された新規制基準への研究用原子炉の対応状況を審査する手続きに長期間を要し、平成27年度には原子炉が運転されなかった。このため、原子炉中性子線ビームを用いた担腫瘍実験動物への照射実験の施行が不可能な状況が続き、本研究課題の遂行状況の遅れの大きな原因の一つとなっている。平成27年度には原子炉は運転されなかったために、平成28年度まで研究期間を延長する手続きをすでに済ませている。
ガンマ線照射などの一般的な放射線照射、抗癌剤投与などの腫瘍細胞のDNAを損傷する処置時における酸素化休止期腫瘍細胞の感受性増強を主な目的に変更することもあり得る。また、平成27年度までに明らかにし得た「血管正常化」を示すサリドマイドの併用投与、殺幹細胞特性が報告されたビグアナイド系抗糖尿病薬のメトフォルミンや低グルコース環境下で殺腫瘍細胞効果増強作用を有する同じくビグアナイド系抗糖尿病薬のフェンフォルミンの併用投与による固形腫瘍内の酸素化休止期腫瘍細胞の感受性の変化を詳細に解析したい。特に、メトフォルミンは、経口抗糖尿病薬として現在頻繁に臨床使用され、有用性が明らかになれば、臨床現場への適応の可能性もかなり大きい。DNA損傷処置後の回復能が大きな酸素化休止期腫瘍細胞分画の感受性を選択的に検出するために要する試薬、抗体などの関係薬品の購入に研究経費の多くをあてざるを得ないと考えている。
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http://www.rri.kyoto-u.ac.jp/rb-rri/