研究課題
p53が野生型及び変異型の腫瘍細胞を用いて、中性子捕捉化合物との共培養時の酸素濃度との関係を解析したところ、常酸素下に比べ低酸素下では、硼素-10の取込み量が有意に減少し、中性子捕捉化合物としてBSH (Sodium Mercaptoundecahydrododecaborate-10B)よりも、BPA (L-para-Boronophenylalanine-10B)を使用した際に、この低下が顕著であり、p53変異型よりも、野生型の腫瘍細胞において顕著に減少した。また、常酸素下では、BSHよりもBPAからの10Bが、低酸素下では、BPAよりもBSHからの10Bが、培養腫瘍細胞内に有意に多く取り込まれた。以上より、P53が変異していることが多い腫瘍組織においては、野生型の正常組織と比べると、低酸素下における10Bの取込み能の低下の影響をやや受けにくく、より均一に10Bが分布でき得ると考えられ、低酸素下での10B分布を考慮すると、BSHを用いた方がより有用と考えられた。他方、HIF-1αをknock-outしたマウス扁平上皮癌SCCVII腫瘍細胞を確立させ、培養状態及び固形腫瘍作成後のメトフォルミンに対する感受性を解析したところ、HIF-1αの欠損が、グルコース枯渇下培養状態でのメトフォルミンに対する感受性を増強させ、常酸素下と比べ、低酸素下培養におけるメトフォルミンに対する感受性を顕著に増強させることが明らかとなった。さらには、HIF-1αの欠損が、固形腫瘍のメトフォルミンを併用した放射線感受性を顕著に増強することも明らかとなった。以上より、腫瘍細胞のHIF-1αの欠損が、グルコース枯渇下や低酸素下におけるメトフォルミンの抗腫瘍効果を増強し得ることが初めて明らかとなり、抗腫瘍効果を損ねると考えられている腫瘍内微小環境の影響を克服するための新たな手法を垣間見ることができた。
すべて 2017 2016
すべて 雑誌論文 (5件) (うち査読あり 4件、 オープンアクセス 3件、 謝辞記載あり 1件) 学会発表 (9件) (うち国際学会 2件、 招待講演 3件)
Radiat. Oncol.
巻: 12 ページ: 26
10.1186/s13014-017-0765-4.
Int. J. Radiat. Biol.
巻: 92 ページ: 187-194
10.3109/09553002.2016.1137104.
BMC Cancer
巻: 16 ページ: 859-868
10.1186/s12885-016-2913-x.
Radiat. Environ. Biophys.
巻: 55 ページ: 89-94
10.1007/s00411-015-0625-2.
日本口腔腫瘍学会誌
巻: 28 ページ: 134-147