研究課題/領域番号 |
26670557
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
小野 公二 京都大学, 原子炉実験所, 寄附研究部門教員 (90122407)
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研究分担者 |
田中 浩基 京都大学, 原子炉実験所, 特定准教授 (70391274)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 硼素中性子捕捉療法 / 正常組織反応 / 晩期有害事象 / CBE値 / 脳壊死 / 肺線維症 |
研究実績の概要 |
BNCTの晩期有害事象を指標とした時のBPAとBSHのCBE値を諸家の報告を基に再解析した。CBEは基本的に血管損傷由来の成分と間質損傷由来の成分に分解できることが分かった。血中硼素濃度(B)と間質硼素濃度(N)が変化しても、N/Bに基づき、CBE値を予測できることが分かった。BPA-BNCTの脳壊死に対するCBEは、0.324 + 1.650x N/Bで計算できる。BSHの場合は、正常脳に浸透できないので、CBE値は、一定値、0.356になった。同様に、BPA-BNCTの肺障害(肺線維症)に対するCBE は、0.32 + N/Bx1.80、で計算できる。BSHの0.356、BPAの0.324は、硼素化合物が血中にのみ存在する場合のCBE値であり、血管外間質にも等濃度で存在した場合には、間質側からの線量が血管損傷由来の成分値に影響する。皮膚の晩期障害(壊死)の原因は血管障害であり、BPAとBSHのCBE値も求まっているので、そのデータを援用し、硼素化合物が間質にも存在する場合の補正係数を、geometric biological factor=GBFと定義すると、BPA、BSHで各々、1.52、1.39となった。脳壊死に対するCBE値には間質の硼素濃度が大きく影響するので、正常脳のBPA取込みを抑制すると、CBE値は小さくなると、予想される。そこで、BPAの取込みを、LAT(l-amino acid transporter)が支配している点、l-アミノ酸に対するLATの忠誠度 は正常組織で高く、腫瘍で低いと予想されたので、l-BPAに先行してl-phenylalanineを前投与することを試みた。結果は狙いどおり、正常脳のBPA濃度が対照の10%に抑制され、CBE値を小さくできることが分かった。これ等の研究は2015年度に、査読付き英文学術誌に論文として公開された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
平成26年5月から、原子炉の新安全基準に対する京大炉の適合性を調べる審査を受けなければならない関係で、27年度も京大炉が運転を休止したため、十分な実験研究ができず、研究炉を用いない実験研究、データの再解析研究を行わざるを得なかった。 平成28年度には京大原子炉での実験研究を考えている。
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今後の研究の推進方策 |
平成26年度に血中ホウ素濃度と血管外の間質ホウ素濃度の比を変える手法を着想し、この手法の効果(濃度比を変える)を実験的に確認した。これによって、BSH、BPAの通常状態での相違に加えて、更にパラメーターを増やすことができる。この手法によってホウ素化合物の濃度比を変えた状態の下で中性子照射の実験を行い、推論の正否を検証するとともに、従来のBNCTよりも腫瘍選択的効果が高いBNCTの実施条件を開発する。
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次年度使用額が生じた理由 |
京大炉が新安全基準への適合性の審査を受ける必要があり、平成27年度を通じて運転休止となったため。
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次年度使用額の使用計画 |
平成28年度の研究において使用する。
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