研究課題
放射線増感剤は癌の放射線感受性を高め治療成績を改善する薬剤である。近年、癌幹細胞という放射線治療抵抗性、抗癌剤抵抗性の細胞集団の存在を示す報告が数多くなされ、この癌幹細胞をターゲットにした治療法が放射線治療でも重要と考えられる。一般的な創薬手法の一つである化合物スクリーニングを用いて、子宮頸癌癌幹細胞を標的とした放射線増感剤の探索研究が可能であるかを検証することを目的とした。初年度の報告では、本年度に癌幹細胞特異的に殺細胞効果を持つ化合物をスクリーニングし、それが結果的に放射線増感作用を持つかどうかを確認するという方針にしていた。本年度では癌細胞中から癌幹細胞をソーティングし、それを化合物スクリーニングした結果、幾つかの化合物で、癌幹細胞特異的に殺細胞効果を持つことがわかった。しかし、それらの癌幹細胞特異的な薬剤を放射線と併用しても、癌細胞全体として放射線増感効果をもたらすわけでないという結果をえた。ここで、さらなるスクリーニング方法の大幅転換をした。低酸素環境は放射線治療が効果が低くなる条件であるが、同時にこの低酸素環境は癌幹細胞の住みやすい環境とも言われている。ここに注目し、我々は低酸素下で放射線を照射する化合物スクリーニング系を確立した。この結果、幾つかの低酸素増感剤の候補を同定するに至った。それらの化合物は、クロノジェニックサバイバルアッセイにおいても有意な放射線増感効果を示した。このような低酸素増感剤のスクリーニングは過去に例がない。スクリーニング系の確立までにかなりの時間を要したため、予定していたマウスを用いたxenograftアッセイまで実験することが難しく、in vivoでも放射線増感剤となりうるかの検証までは本研究期間内にはできなかった。
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